全 情 報

ID番号 01835
事件名 懲戒処分無効確認請求事件
いわゆる事件名 関西電力事件
争点
事案概要  会社および労組を誹謗・中傷し、事実でない事柄を記載したビラを、元旦の早朝、社宅に配布した労働者に対してなされた譴責処分の無効確認が求められた事例。(一審 請求認容、二審 原判決控訴人敗訴部分取消、請求棄却)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損
懲戒・懲戒解雇 / 処分無効確認の訴え等
裁判年月日 1978年6月29日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ネ) 326 
昭和49年 (ネ) 1288 
裁判結果 取消 棄却(上告)
出典 労働民例集29巻3号371頁/時報898号107頁/労働判例302号58頁/労経速報986号3頁
審級関係 上告審/01901/最高一小/昭58. 9. 8/昭和53年(オ)1144号
評釈論文 阿久沢亀夫・判例評論241号25頁/盛誠吾・労働判例314号23頁/楢崎二郎・季刊労働法111号98頁/木下秀雄・日本労働法学会誌54号132頁
判決理由  〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―会社中傷・名誉毀損〕
 4、本件譴責処分の適法性
 (一)前記就業規則第七八条第五号は「その他特に不都合な行為があったとき」と規定し、同条前各号に該当しない不都合な行為のうちその情状において特に不都合な行為のみを懲戒の対象とする旨を定めている。
 そこで被控訴人の本件ビラ配布行為が右にいう譴責処分に相当する「特に不都合な行為」に該るか否かについて判断するに、被控訴人は前記のとおり同僚に比し、資格、昇給の面で劣った待遇を受け、また職場の中で職員間の行事にも出席困難な状況にあったので、これらについてとくに不満ないし疑問を抱いていたものと推認できる。かかる場合、会社としては、そのような被控訴人の不満ないし疑問に対して充分納得のいく措置を講じてこれを解消させるべき配慮が必要であったのに、そのような配慮を尽したことを認むべき証拠は何一つない。したがって、このような控訴会社の態度もまた、被控訴人に本件ビラを配布せしめるに至った一因であると考えられないではない。しかしながら、前記認定の諸事情を勘案すると、被控訴人の本件ビラ配布行為は公益性、公共性を有する電気事業に携わる労働者としての節度を超えるものであり、従業員の会社に対する不信感を醸成し、企業秩序を乱し、または乱すおそれがあったもので、殊に前記の本件ビラ配布に至った経緯に照せばその情状において決して悪質でないとはいえないから、就業規則第七八条第五号にいう「特に不都合な行為」に該ると認めても、何ら差し支えなく、これを理由に被控訴人を譴責処分に付したとしても懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものとは認められない。しかして本件譴責処分は適法であり有効であるというべきである。
 〔懲戒・懲戒解雇―処分無効確認の訴え等〕
 控訴会社においては、懲戒処分を受けたことにより、その被処分者が人事考課の面で不利益を被むるであろうことは推測するに難くなく、しかも、昇給、昇格、永年勤続表彰等にあたっても、不利益な取扱いを受けることがある旨を労働協約(前記「解明」を含む。以下同じ。)ないし就業規則中に規定している。そして、原審および当審における被控訴本人尋問の結果によれば、本件譴責処分を受けた以後における被控訴人の昇給額は、常に最低ランクに属し、被控訴人は譴責処分を受けたが故に、勤続年数一五年目の永年勤続表彰を受けることができなかった(しかして、副賞金の支給をも受けられなかった)ことが認められる。以上のように、懲戒処分を受けた者は、そのことの故に、給与その他の待遇の面で種々の不利益を強いられ、または強いられるかも知れないという派生的法効果を免れ得ないものであることが認められる。ところで、このような法効果は適法な懲戒処分を受けた場合にのみ招来されるべきもので、懲戒処分が不適法になされたものであるにもかかわらず、もし、会社がそれを適法な処分であると誤解しているような場合には、この誤解に基づいてなされる種々の不利益取扱はすべて違法ないし無効である。したがって、もし不適法な懲戒処分がなされた場合には、その都度紛争を解決する必要を生ずるが、紛争の内容を具体的に特定できないために、一定の権利または法律関係の存否の訴を提起することの困難な場合もあり、その処分を要件とする種々な不利益取扱はすべて違法ないし無効である旨を宣言する意味において、直接に紛争のかなめをなす当該懲戒処分それ自体の無効を確認することもまた紛争の抜本的な解決に役立つものと解される。4、以上説示したように本件譴責処分は、上司の単なる注意、訓戒とは異なり、控訴会社と被控訴人間の労働契約の内容の一部をなす就業規則を適用してなされたいわゆる懲戒処分であるが、同処分は人事考課の面で被処分者に不利益を与える危険があるばかりでなく、その処分を要件にして、労働協約あるいは就業規則の規定を適用することにより、派生的に被処分者の労働契約上の地位ないし待遇に不利益な影響を及ぼすことが可能である。したがって、右処分の違法を信ずる被処分者は、右のような不利益を避けるため、右処分が適法なものとして取扱われるのを防止すべく、同処分の無効確認を求める法律上の利益を有するものと解すべきである。よって、控訴人の本案前の抗弁は採用するに由ない。