全 情 報

ID番号 01902
事件名 出勤停止処分無効確認等、従業員地位確認等請求本訴、独身寮明渡請求反訴事件
いわゆる事件名 ダイハツ工業事件
争点
事案概要  自宅待機命令を無視し工場内への入構を強行し、警士を負傷させ、ベルトコンベアを停止させたとして二度の出勤停止処分に続き懲戒解雇された従業員が、右各処分は懲戒権の濫用にあたり無効である等として出勤停止処分無効と従業員として地位の確認等求めた事例。(原判決破棄、労働者敗訴)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
裁判年月日 1983年9月16日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (オ) 284 
裁判結果 破棄自判
出典 時報1093号135頁/タイムズ509号108頁/労働判例415号16頁/労経速報1164号3頁/金融商事705号38頁/裁判集民139号503頁
審級関係 控訴審/01872/大阪高/昭55.12.24/昭和52年(ネ)558号
評釈論文 小西国友・季刊実務民事法5号242頁/中窪裕也・ジュリスト857号123頁/渡寛基・早稲田法学60巻2号135頁
判決理由  〔懲戒解雇―懲戒事由―暴力・暴行・暴言〕
 まず本件第二次出勤停止処分をみると、その対象となった昭和四六年一二月一八日及び同月一九日の行為は、本件第一次出勤停止処分前の所為であり、しかも本件第一次出勤停止処分の対象となった一連の就労を要求する行為とその目的、態様等において著しく異なるところはないにしても、より一層激しく悪質なものとなり、警士が負傷するに至っていることと、被上告人は本件第一次出勤停止処分を受けたにもかかわらず何らその態度を改めようとせず、右処分は不当で承服できないとしてこれに執拗に反発し、その期間中池田第二工場の門前に現れて右処分の不当を訴えるビラを配布するという挙に出たこととを併せ考えると、本件第二次出勤停止処分は、必ずしも合理的理由を欠くものではなく、社会通念上相当として是認できないものではないといわなければならず、これを目して権利の濫用であるとすることはできない。
 〔懲戒解雇―懲戒事由―業務妨害〕
 次に、本件懲戒解雇について考えるに、原審の確定した前記事実関係によれば、被上告人は、職場規律に服し、上告人の指示命令に従い、企業秩序を遵守するという姿勢を欠いており、自己の主張を貫徹するためひたすら執拗かつ過激な実力行使に終始し、警士の負傷、ベルトコンベアの停止等による職場の混乱を再三にわたり招いているのであって、その責任は重大であるといわなければならない。
 (中 略)
 それゆえ、以上のような被上告人の行為の性質、態様、結果及び情状並びにこれに対する上告人の対応等に照らせば、上告人が被上告人に対し本件懲戒解雇に及んだことは、客観的にみても合理的理由に基づくものというべきであり、本件懲戒解雇は社会通念上相当として是認することができ、懲戒権を濫用したものと判断することはできないといわなければならない。