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ID番号 01932
事件名 解雇無効確認等請求控訴事件/附帯控訴事件
いわゆる事件名 ダイハツ工業事件
争点
事案概要  被控訴人が工場廃止にともなう残務整理の途中組合事務所前におかれた組合の書類をつめたダンボールを持ちだしたとして諭旨解雇されたため、その無効確認と賃金支払並びに慰藉料及び弁護士費用の支払を求めた事例(一審一部認容、控訴棄却、附帯控訴一部認容)。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 守秘義務違反
裁判年月日 1985年2月27日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (ネ) 2537 
昭和57年 (ネ) 2115 
裁判結果 棄却(上告)
出典 労働民例集36巻1号112頁/労働判例462号124頁
審級関係 上告審/03002/最高三小/昭62. 1.20/昭和60年(オ)604号
評釈論文
判決理由  (六)ところで、被控訴人の本件ダンボール箱持出しの動機が被控訴人の右弁明どおりだとすると、被控訴人は組合の文書から控訴人の自己に対する処遇に関する情報を得ようとしたものであり、このことは右文書中に存する人事に関する事項を知ろうとしたことにほかならない。人事に関する事項は通常秘密とされることが多く、かつ本件ダンボール箱内の人事に関する文書中には、単に被控訴人に関するものに止まらず、他の者に関する人事事項も含まれていることは当然に予期しうるところである。してみると、被控訴人が本件ダンボール箱を持ち出した行為は、少なくとも組合の所持する人事に関する秘密を漏らそうとしたものであり、かつ被控訴人に対する控訴人の処遇等は組合のみで決しうるものではなく、組合と控訴人の協議を経るものであることも予想しうるところであるから、右人事に関する事項は、控訴人の従業員に対する人事の秘密事項である場合もないとはいえない。右の人事に関する秘密が懲戒事由にいう控訴人の業務上重大な秘密にあたるか否かの点はしばらくおくとしても、右の点において被控訴人は控訴人の業務上の秘密を漏らそうとしたといえなくはない。
 (七)しかしながら、被控訴人の本件ダンボール箱持出しによって控訴人の業務上の秘密が漏れた事実を認めうる資料はないのであり、本件ダンボール箱の内容物は組合の所有であって控訴人の所有でないこと及び前認定のような本件ダンボール箱の保管方法のずさんさ等を考え合せると、被控訴人の本件ダンボール箱持出し行為をとらえて、就業規則七三条一項一一号の「業務上重大な秘密を社外に漏らし、又は漏らそうとした」ことに該当するとして解雇するが如きは著しく不当であり、解雇権(懲戒権)の濫用として許されないものというべきである。