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ID番号 01948
事件名 休職処分取消請求事件
いわゆる事件名 渋谷区職員事件
争点
事案概要  渋谷区職員で区民会館の清掃等の単純労務に従事する者が、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、傷害の罪で起訴されたことを理由とする休職処分の取消を求めた事例。(請求棄却)
参照法条 地方公務員法29条,33条
体系項目 休職 / 起訴休職 / 休職制度の合理性
裁判年月日 1978年1月23日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (行ウ) 119 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集29巻1号1頁/タイムズ369号350頁/労働判例292号30頁
審級関係
評釈論文
判決理由  5 裁量権の濫用について
 本件処分が裁量権の行使についてその範囲を著しく逸脱し、これを濫用するものであるか否につき検討する。地方公務員法三三条は職員の信用失墜行為を禁じているところ、原告が前記公訴事実及び罪名で起訴されたことについては当事者間に争いがなく、公訴事実の存否は刑事訴訟において確定されるものであるにせよ右公訴事実として摘記された原告の行為は、一般社会人としての節度を著しく逸脱した違法不当な行為で国民一般の強い非難に値する内容のものであることが明らかであり、右公訴事実が公務に基因するものでないとしても原告がそのような犯罪の嫌疑を受けて起訴されたということそれ自体が原告に職員としての信用失墜行為があったという疑惑を生じさせるに充分であったといわざるを得ない。又、地方公務員法三〇条、三五条は職員の職務専念義務を定めているが、原告が前記公訴事実記載の日時に現行犯逮捕され、昭和五一年六月一六日に保釈されるまで勾留が継続されていたことについては当事者間に争いがなく、右事実によれば、原告は本件休職処分の発令当時(同年五月一九日)、既に六〇日余も勾留を継続されていたのであるから、職務に従事することは不可能であり、公務員として職務専念義務を完遂できず、職務の遂行に重大な支障を生じさせていたことが明らかである。
 (三)右のとおり、公務に対する住民一般の信頼及び職務の遂行等いずれの点から考えてみても、被告が原告を従前どおり職務に従事させることを不適当と判断し、休職を命じたことには十分な合理性があり、必要性があるというべきであり、他に別段の立証のない本件においては本件休職処分につき被告において裁量権の行使の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法はなく、原告の右主張は理由がない。