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ID番号 01958
事件名 損害賠償等請求控訴事件
いわゆる事件名 日星興業事件
争点
事案概要  下請会社の労働者が、元請先での就労中の言動が会社の信用を傷つけたとして、懲戒解雇され、その旨の新聞広告を掲載されたり葉書によって県内の多数の土木業者に通知されたりしたので、会社と代表者個人に対して、慰謝料および謝罪広告を請求した事例。(一審 一部認容、一部棄却、当審 一部変更、一部控訴棄却)
参照法条 民法709条
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続
裁判年月日 1975年3月27日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ネ) 1861 
裁判結果 一部変更 一部棄却(上告)
出典 時報782号48頁
審級関係 一審/03590/大津地/昭48.10.15/昭和47年(ワ)125号
評釈論文
判決理由  控訴人の本件言動は、被控訴会社にあっては就業規則上懲戒解雇事由ある場合に該当することになる。
 四、しかしながら、右乙第一号証によると、被控訴会社の就業規則には、右の規定とあわせて懲戒解雇の手続についても規定されており、それは「懲戒(譴責、減給、出勤停止、懲戒解雇)は懲戒委員会の議を経てこれを行なう」(懲戒規定の一)、「懲戒委員会は、経営者、部課長、従業員代表でもって構成する」(同九)、「懲戒を受ける者の弁明は懲戒委員会において審議する」(同十)という趣旨のものであることが認められるところ、前記認定事実によっても前掲の当審における被控訴人尋問の結果によっても、本件懲戒に際してこれらの手続が践まれていないことが明らかである。およそ、就業規則が制定され、その中に懲戒の手続が規定されているかぎり、それは使用者を拘束するものであるから、その手続を経ないでなされた本件懲戒解雇には、右就業規則の懲戒規定に違反してなされた瑕疵があるといわなければならない。
 (中 略)
 本件懲戒解雇は、単なる手続違反の瑕疵があるというだけにとどまらず、控訴人の権利を実質的に害したものと解すべきである。したがって、控訴人のその余の主張について判断するまでもなく、本件懲戒解雇は不法に控訴人の権利を侵害したことになり、結局、被控訴人服部は民法七〇九条により、また同被控訴人は被控訴会社の代表取締役で本件解雇はその職務の執行としてなされたものであるから被控訴会社は有限会社法三二条、商法七八条二項、民法四四条一項により、控訴人に生じた損害を賠償する義務があるというべきである。そして、前掲各証拠によると、本件解雇により、控訴人は突然収入源を失い、精神的苦痛を被ったと認められるところ、前記認定の解雇にいたる経緯、ことに控訴人に一応懲戒解雇事由に相当する言動があったこと、その後、被控訴会社から解雇手当の名目で賃金の三〇日分を受取っていること、その他諸般の事情を考慮すると、控訴人の右精神的苦痛を慰藉すべき金額は一〇万円をもって相当と認める。