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ID番号 03008
事件名 分限免職処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 北九州市病院事件
争点
事案概要  過員整理を理由に行われた市病院局の単純労務者に対する分限免職の効力が争われた事例。
参照法条 地方公務員法28条1項4号
体系項目 解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1987年1月29日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (行コ) 2 
昭和57年 (行コ) 3 
昭和57年 (行コ) 4 
裁判結果 一部認容
出典 労働民例集38巻1号39頁/労働判例499号64頁/訟務月報33巻8号2136頁/判例地方自治35号29頁
審級関係 一審/03186/福岡地/昭57. 1.27/昭和43年(行ウ)15号
評釈論文 松尾邦之・労働法律旬報1187号26~39頁1988年3月10日/平野達夫・地方公務員月報293号50~60頁1987年12月
判決理由 〔解雇-解雇権の濫用〕
 地公法二八条一項四号の規定による分限免職処分に基づく過員の整理のため、現実になにびとを免職するかは、任免権者がみずからの裁量によつて決定しうるものであるが、その決定にあたつては、同法一三条の定める平等取扱の原則、同法二七条一項の定める公正基準及び同法五六条の定める不利益取扱の禁止に違反してはならず、また、それが著しく客観的妥当性を欠き、明らかに条理に反するような場合には、自由裁量の限界を超えるものとして違法というべきである。
 ところで、右分限免職処分は、同法二八条一項一号ないし三号の場合と異なり、職制もしくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合、被処分者にはなんら責められるべき事由がないにもかかわらず、任免権者が被処分者に対し、その意思に反して一方的に免職という不利益な処分をなしうるものであること、また、現行法制上地方公務員が住民全体の奉仕者であると同時に勤労者であることを考慮しても、そのことから直ちに任免権者において、分限免職処分を回避するための措置として、余剰人員の配置転換を命ずる義務があるとすることは、任免権者の人事権、経営権を制肘することを認めることになり妥当でなく、ただ、過員整理の必要性、目的に照らし、任免権者において被処分者の配置転換が比較的容易であるにもかかわらず、配置転換の努力を尽くさずに分限免職処分をした場合に、権利の濫用となるにすぎないものというべきである。