全 情 報

ID番号 03085
事件名 就業禁止処分取消等請求事件
いわゆる事件名 安全興業江東営業所事件
争点
事案概要  上司との口論の後、約五カ月間乗務をしなかったタクシー運転手に関し、会社は「始末書の提出まで当分の間内勤を命ずる」旨の処分を行なったものと主張したが、右処分はなされていないとして、乗務をしなかった期間の賃金請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法24条
労働基準法89条1項9号
民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 仕事の不賦与と賃金
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 始末書不提出
裁判年月日 1987年8月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ワ) 14829 
裁判結果 認容
出典 労働判例504号48頁/労経速報1306号21頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-始末書不提出〕
 2 被告は、昭和六〇年三月九日A所長が原告に対し、「昨日のことは君のほうが悪いじゃないか。二度とこのような不始末を起こさないという趣旨の始末書を提出しなさい。提出するまで当分の間内勤するように。」と反省を促したと主張し、右主張に沿う証人A及び同Bの各証言があるが、右各証言は、右に認定した経過に照らし措信し難く、他に右主張を認めるに足る証拠はない。 そして、右認定の経過によれば、始末書の提出については、原告が昭和六〇年三月一八日以降勤務日毎に出勤して配車を求めるようになってから、被告がこれを拒否する理由として挙げるようになったものにすぎず、また、「始末書を提出するまで当分の間内勤を命ずる。」旨の処分については、被告が昭和六一年四月一三日に発した前記通知書で初めてその存在を主張するに至ったものであって、本件各処分はいずれもこれがなされた形跡を認め難く、本件各処分はいずれも存在しないものといわざるを得ない。
〔賃金-賃金請求権の発生-仕事の不賦与と賃金〕
 被告は、昭和六〇年三月八日の乗務については、原告が乗務しないことに同意した旨主張するが、前記三1(二)に認定したとおり原告はA所長に解雇する旨いわれて退社したものであって、右主張を採用する余地はなく、また、同月九日以降乗務させなかったのは本件各処分に基づくものである旨主張するが、本件各処分の存在が認められないこと前記三2に述べたとおりである。
 したがって、原告は、右期間中の未払賃金を被告に請求し得るものといえる。