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ID番号 03089
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 兵庫県競馬組合事件
争点
事案概要  競馬場で的中馬券に対する払戻し業務に従事していた女子労働者の罹患した頚肩腕症候群につき使用者の安全配慮義務違反の責任が問われた事例。
参照法条 民法415条
民法1条2項
労働基準法8章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1987年9月10日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ネ) 1623 
裁判結果 棄却
出典 労働判例504号35頁
審級関係 一審/神戸地/昭60. 8. 8/昭和53年(ワ)529号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 被控訴人が担当していた支払補佐の作業量は、先に認定したとおり、従事投票所、帳場の位置等によりその繁忙度に差があるから、業務量の負担の均等化を図り、特定の従事員の作業量が過重な状態で継続しないよう配慮して適切な帳場の配置替えを県及び両市は実施すべきであったところ、右認定のように昭和五一年一月以前における配置替えの間隔は殆んど一年ないしそれ以上となっていて、その後の右間隔と比較すると著しく長くなっており、支払補佐の作業量や作業内容からみて、右の間隔はやや長きに失するものと解されるし、また、(証拠略)及び右被控訴人本人の供述によれば、投票所のうち、前記機械化前における第五、それ以後における第一、二、七の各投票所が払戻額等からみて比較的繁忙な所であり、また、一般的にいって、各投票所内の帳場のうちでも端ないしそれに隣接する帳場が比較的繁忙であることが認められるところ、被控訴人の配置についてみると、前記配置表(三)のように番号四以降の八回の配置替えのうち、五回は前記の比較的繁忙な投票所に配置され、また、帳場についてもうち五回は端ないし端から二番目に配置されているのであって、右の配置替えは、従事員の数、技能、人間関係等諸般の事情も考慮されなければならないとしても、前記の業務量についての配慮は重要なものであって、この点からみると、被控訴人に関する前記の配置替えは不適切であったことは否定できない。
 次に、繁忙時における応援の点について検討すると、(証拠略)によれば、園田競馬場においては、昭和四九年一月以降繁忙が予想される開催日には他の競走場の従事員の応援を受けていたこと及び同一投票所内でも特に繁忙時には適宜所内の者による応援がなされていたことが認められるが、他方、右各証拠によれば、右の他の競走場の従事員の応援は、その大半が支払帳場以外の業務について行われており、昭和四九年一月三〇日に園田競馬場で起った暴動事件以前においては、繁忙日に特別に支払帳場に応援がなされたことがあったが、その後は右の形の応援はなくなり、通常の支払帳場の構成員が居ない場合にその補充としての応援がなされるだけとなっていたこと及び前記の投票所内部での応援は大口の払戻があった場合でしかも支払業務自体を直接応援するものではないことが認められるのであって、以上の応援によりすでに認定した被控訴人らの支払業務従事者の業務量ないし勤務状況が特に改善されたことを認めるに足りる証拠はない。
 以上に検討したところからみると、県及び両市の従事員の配置、応援についての対策には不十分な点があったことは否定できない。