全 情 報

ID番号 03124
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 川口税務署
争点
事案概要  税務署で電動加算機により打鍵作業に従事していた女子職員の頚腕障害につき、業務量、作業期間および作業態様等からみて業務起因性なしとし、安全配慮義務違反および注意義務違反を理由とする損害賠償請求を棄却した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1984年7月2日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 6653 
裁判結果 棄却
出典 労働判例435号28頁/労経速報1205号23頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 1 国は、国家公務員(以下「公務員」という)に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解すべきところ、右の安全配慮義務の具体的内容は、公務員の職種、地位及び安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるべきものである(原告の引用にかかる前記最高裁昭和五〇年二月二五日第三小法廷判決参照)。
(中略)
 (一) 原告の業種変更にあたって、適性、年齢、経験を無視したとの主張については、前記五、4(七)で認定したとおり、原告は、着任当時既に加算機の打鍵については経験を有していたこと、原告の管理第一係における業務は、前記三、1及び4において認定したとおりであって、本件認定にかかる疾病の原因となるほど過重であったとは認められないこと等に照らせば、原告を管理第一係の加算機担当者として配置したことが安全配慮義務に違反する行為であったと認めることはできない。
(中略)
 以上の認定及び右五において本件認定にかかる疾病と業務の因果関係について判断したところを総合すると、昭和四二年一二月一五日頃以降も原告が加算機業務に従事したことが、原告の症状に対して全く悪い影響を与えなかったとは言い切れないが、前記認定のとおり原告の打鍵業務が、本件認定にかかる疾病の発症の原因となるほどに過重だったものと認められないこと、原告が自ら配置換の申入れをなした際に診断書も提示せず、昭和四三年二月以降はその申入れも行なっていないこと等に照らせば、被告において積極的に原告の状態を調査して昭和四二年一二月ないし昭和四三年一月の段階で直ちに配置換を行なうべき義務があったものとは認め難く、他にこれを認めるに足る証拠はない。