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ID番号 03127
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 航空自衛隊第三航空団事件
争点
事案概要  航空自衛隊のジェット戦闘機の墜落による死亡事故につき、電子燃料装置の稼動に必要な真空管の交換についての監覧を怠ったことに国の安全配慮義務違反があるとして損害賠償請求を認容した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法416条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1984年7月19日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ネ) 1118 
裁判結果 一部棄却・変更(確定)
出典 時報1121号33頁/東高民時報35巻6・7合併号145頁/タイムズ533号148頁/訟務月報31巻4号735頁
審級関係 一審/03347/東京地/昭53. 4. 5/昭和50年(ワ)6241号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 国は、国家公務員に対し、その公務遂行のための場所、施設若しくは器具等の設置管理又はその遂行する公務の管理にあたって、国家公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解すべきところ、(最高裁判所昭和五〇年二月二五日第三小法廷判決、民集二九巻二号一四三頁)、<証拠略>を総合すれば、次の事実が認められる。
(中略)
 右事実によれば、F-八六Dは、米空軍の使用していた中古機を航空自衛隊が供与を受けたものであって、電子式燃料装置に故障が多発していたものであるところ、被控訴人は取付品定期交換に際し整備基準に違反して中古の真空管を装着した中古のメイン増幅器、アフターバーナー増幅器(性能試験を実施して正常と判定されたものとはいえ中古品であることには変りがない。)をそのまま使用時間ゼロの新品とみなして継続使用していたのであるから、本件事故機についても右のような整備基準に合致しない整備が行われ、右不完全な整備による中古真空管が故障した結果本件事故が発生したものであり、航空自衛隊の幹部は右整備契約会社、整備補給群の実際の取扱を知っていたものと認定するのが相当である。
 そうすると、被控訴人の履行補助者である航空自衛隊の幹部は、整備契約会社、整備補給群をして特に真空管の交換については完全にこれを行い、中古品を新品として取扱うようなことをさせないように厳重に監督し、もって事故の発生を未然に防止すべき具体的注意義務があったものというべきところ、右義務を尽さず、前記安全配慮義務に違反し、その結果本件事故が発生するに至ったものというべきである。