全 情 報

ID番号 03163
事件名 職員地位確認請求事件/賃金支払請求事件
いわゆる事件名 日本専売公社事件
争点
事案概要  組合役員(全専売支部青年部副部長)に対する転勤命令は有効であり、右命令の拒否を理由とする懲戒免職処分が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1983年7月29日
裁判所名 新潟地長岡支
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ワ) 235 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報1085号146頁/労働判例417号65頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 1 前記のように被告の就業規則五〇条は、業務上の都合により職員を転勤させることができる旨を規定しており、昭和三四年四月四日、被告と全専売労働組合間に成立した転勤の事前通知に関する労働協約一条は、組合に加入できない者以外の職員に対しては、転勤発令の七日前に文書でその旨を通知しなければならない旨を定めているが、職員の希望により転勤する場合は、事前通知は不要とされている(同条但書)。
 2 昭和四〇年五月一日、被告と全専売労働組合間になされた了解事項は組合役員となっている職員の転勤に関しては組合へも事前通知をなすべきことを定め、昭和四六年一二月二三日、被告と全専売労働組合間になされた再抗弁4の2の確認事項(これは前記昭和三四年四月四日付労働協約の一部修正協約とみられる。)は、職員を支部局区域外に転勤させる場合(本件の場合もこれに当る。)につき、事前通知を一〇日前になすべきことを定めるほか、転勤は本人の希望を優先考慮するとともに、適正、業務上の必要度等を総合勘案して行なう旨を規定している。
 ことがそれぞれ認められ、右認定事実および被告のような大規模企業においては、業務運営上、一般職員の転勤は不可欠とされていること(このことは当裁判所に顕著な事実である。)よりすれば、被告と全専売労働組合間の労働協約においては、支部局区域外への転勤に関し本人の希望のみが考慮されねばならぬとまでは定められておらず、支部局区域外転勤に際しては、本人の希望が優先考慮される(最大に尊重される)が、業務上の必要がある場合には、本人の希望、意思に反する転勤も有効になしうることが、暗黙裡に承認されているとみるのが相当である。
 従って、《証拠略》によると、原告は本件転勤命令とか、転勤を希望しておらず、また本件転勤命令は原告の意思、希望に反するものであることが認められるが、そのことだけで本件転勤命令が無効であるとはいえない(本件転勤命令が業務上の必要に基づいて発せられたことは後記のとおりである。)
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 (4) 本件転勤命令については、当初は長岡支部も不当労働行為の疑いありとして検討がなされたが、長岡工場側の説明をきいた後、最終的には不当労働行為の線を捨て、支部長など組合幹部役員も、転勤命令を応諾するよう原告を説得するようになった。
 ことがそれぞれ認められ、これら事実(特に原告が長岡支部青年部副部長就任前にその転勤が内定していた事実)からすると、前記認定の事実から本件転勤命令が原告主張のような不当労働行為に当るとはいえず、ほかにこれを認めるに足りる証拠はない。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 (1) 友部工場では、機械の停止、再開により生ずるクリーニングアップ、ウォーミングアップのための不能率稼働時間(約九時間)を解消するため、二直三交替制の勤務形態をとることとなったが(被告倉敷工場においても同様の勤務形態がとられている。)、このような勤務形態および友部工場におけるその他の労働条件については、被告と全専売労働組合との間に二〇回にわたる交渉が行われ、昭和五二年三月、協議が成立した(なお友部工場においては二号俸の加給が行われている。)。
 (2) 昭和五一年一二月二日、前記のように原告の友部工場転勤が内定した後、これに備えて長岡工場は昭和五二年四月、原告を原料加工課に配置換し、高圧ガス取扱作業主任者講習を受講させ、同年六月から同年七月にかけて、被告中部支社において設備技術課研修を受けさせた。
 (3) 原告と同じく、昭和五三年七月一日付で友部工場への転勤を命ぜられた技術員訴外A、同B、同Cはいずれもこれに応じて転勤をなし、昭和五三年一〇月、友部工場は完成し、昭和五四年一月より本格的操業を開始した。
 (4) 昭和五三年六月二〇日、前記協約に基づき、本件転勤命令につき原告および長岡支部に事前通知がなされたが、原告は不当労働行為であるとして、これを拒否する旨の意思を表明したので、同日以降同月二三日までの間、長岡工場は長岡支部に対し、事情説明を行い、この了解をえた。
 同年六月三〇日、(翌七月一日が土曜日休日であったため)本件転勤命令が原告に告知されたが、原告は辞令書の受領を拒絶したので、長岡工場の工場長および製造部長などは転勤に応ずるよう原告を説得し、同年七月二日から同年同月一九日までの間、殆んど毎日、一日二回にわたって、長岡工場の事務部長、製造部長などの幹部職員、友部工場の幹部職員および長岡支部の支部長などの組合役員が転勤に応ずるよう原告を説得し、また転勤に応じなければ懲戒処分がなされることを注意、警告したが、原告はこれに耳をかさず、すべて黙殺する態度をとり、抗弁2のような行動をとり、前記認定の、最終的には妥協したい、との気持を外部に示すことはなかった。
 (5) 昭和五三年六、七月当時、原告は健康な独身者であり、友部工場への転勤を拒否するに足りる個人的理由を有しなかった。
 ことがそれぞれ認められ、右(1)ないし(5)の認定事実に前記認定の抗弁1、2の非違事実、本理由一一で認定の1ないし4の事実、本理由一二で認定の1、2の事実、本理由一四で認定の(2)、(4)の事実をあわせ考えると、前記認定の1ないし4の事実から本件免職処分が社会通念上許し難い程、苛酷な処分(そのような場合は、本件免職処分は懲戒権の濫用に当り、無効となる。)であったとみることはできず、ほかに本件免職処分が懲戒権の濫用に当ることを裏付ける事実を認めるに足りる証拠はない。