全 情 報

ID番号 03223
事件名 雇用関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 あけぼのタクシー事件
争点
事案概要  不当労働行為により解雇された労働者が、解雇後原職復帰するまでの間に他のタクシー会社に運転手として雇用されていたケースで、バックペイの際の中間収入の控除の範囲、さらに一時金を控除の対象とすることの可否が争われた事例。
参照法条 労働基準法3章
労働基準法26条
民法536条2項但書
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / バックペイと中間収入の控除
裁判年月日 1981年3月31日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ワ) 81 
裁判結果 控訴
出典 労働民例集32巻2号180頁/労働判例365号76頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-バックペイと中間収入の控除〕
 使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得たときは、原則として民法五三六条二項但書により、これを使用者に償還すべきものと解せられるが、他方、労働基準法二六条が「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合使用者に対し平均賃金の六割以上の手当を労働者に支払うべき旨を規定しており、同条の規定は、労働者が民法五三六条二項にいう「使用者の責に帰すべき事由」によつて解雇された場合にもその適用があるものというべきである。したがつて、使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利益金額を賃金額から損益相殺により控除することができるのは、平均賃金の四割の範囲内に限られるものと解せられる(最高裁判所昭和三六年(オ)第一九〇号昭和三七年七月二〇日判決・民集一六巻八号一六五六頁参照)。なお、原告らの主張する一時金は、三か月を超える期間ごとに支払われる賃金として、労働基準法上平均賃金の算定の基礎とならず(同法一二条四項)、したがつて、使用者には同法二六条による支払義務もないから、労働者の利得金額を一時金から控除することについては、前記控除限度額の適用は受けず、一時金全額が損益相殺の対象になるものというべきである。
 (中略)
 労働基準法二六条の労働者の生活保障の趣旨に照らし、賃金から控除し得る中間収入は、その収入の発生した期間が賃金の計算の基礎となる期間と時期的に対応するものであることを要するものと解せられる。