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ID番号 03241
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 松心園事件
争点
事案概要  大阪府の自閉児治療施設の生活指導員の頚肩腕症候群、腰痛につき、府に安全配慮義務違反があるとして損害賠償請求を認容した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1980年2月18日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 879 
裁判結果 一部棄却・認容(控訴)
出典 時報981号103頁/タイムズ422号136頁/労働判例338号57頁
審級関係
評釈論文 安西愈・労災職業病の企業責任〔労災職業病健康管理【1】〕286頁/古賀哲夫・法律時報53巻7号108頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 被告が、使用者として、労働基準法及び同法付属関連法令の趣旨に基づき、労働契約上その被用者に対し、腰痛症などその業務から発生し易い疾病にかからぬよう適宜な人員の配置、充分な休憩時間の設定・労働時間の短縮など労働条件の整備、疲労防止のための施設の整備などの職場環境の改善、準備体操・スポーツ・姿勢指導など職業病予防のための教育、定期健康診断、特殊検診などの健康管理を行い、職業病の予防・早期発見に努めるとともに、申告、診断などによりこれを発見したときは、就業制限、早期治療を適切に行なって病状の悪化を防ぎ、その健康回復に必要な措置を講ずる義務(安全配慮義務)を負っているところ、労働基準法、労働者災害補償保険法等の法意に鑑みれば、被用者の疾病につき業務起因性が肯定される以上、特段の事情がない限り、被用者の右疾病は使用者が右安全配慮義務を充分果さなかったことによるものと推定され、これを争う使用者において右特段の事情を立証する責任を負うものと解すべきである。
 以上の諸事情を前提にして考慮するのに、A園長は第一次欠勤後の原告の業務については、原告の希望を受入れ、業務内容についても指示を与えず、原告に任せていたことは前記のとおりであるが、それによってB事務当局の原告に対する安全配慮義務が尽くされたものということはできず、原告が第一次欠勤の原因となった患児の療育業務に再び就いた以上、再発しないように適宜の措置をとるべき義務を有しているものというべきである。尤も、C病院では腰痛対策として昭和四六年六月二六日から特別健康診断を実施したところ、原告は右同日の検診以後D部長の受診を拒否したことは前記のとおりであるけれども、弁論の全趣旨によれば、B事務当局はそれを放置して原告のなすがままに任せていたものと推認され、その後原告に対し意を尽くして受診させるよう働きかけたことを認めるに足りる証拠もないのであるから、右の事情をもってしてもB当局が安全配慮義務を尽くしたとすることはできない。