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ID番号 03292
事件名 地位保全等仮処分申請控訴事件/同附帯控訴事件
いわゆる事件名 いずみ保育園事件
争点
事案概要  保育園の臨時保母の雇入れ後一回更新された期間の定めのある労働契約につき、期間満了により自動的に契約が終了されたとした事例。
参照法条 労働基準法2章
民法629条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1979年4月20日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ネ) 299 
昭和54年 (ネ) 91 
裁判結果 認容
出典 労経速報1013号3頁/労働判例323号73頁
審級関係 一審/00391/福岡地/昭53. 4.15/昭和52年(ヨ)220号
評釈論文 入江信子・季刊労働法114号107頁
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 本件において控訴人が主張しているのは期間満了によって労働契約関係が消滅したことの通知をしたことであり主張されている労働契約の消滅事由は期間満了であって労働契約関係解約の意思表示をしたことではなく、前叙のとおり期間満了により本件各労働契約は消滅したのであるから、各被控訴人の右各無効の主張はいわば的もないのに矢を放つものであり、立ち入って判断を加えるまでもなく採用し難い。各被控訴人の前記各無効の主張が控訴人の設置するA保育園における臨時保母についての期限付労働契約の実情があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で継続していたから、控訴人の契約の更新拒絶は実質上解雇の法理の適用がある旨の主張を含むものであるとしても、本件は、前叙のとおり、控訴人が昭和五〇年九月設置したばかりのA保育園に勤務する臨時保母三名につき通知した労働契約期間満了の効力が果して発生したか否かの争われている事案であって、臨時保母三名のうち被控訴人Y1、同Y2については前叙のとおり各順次二回締結された、期間を定めた労働契約中その間の飛ばされた期間より前の契約についてのみ試用期間のあったことが疎明されることから仮に後の契約は前の契約を実質的に更新したものであると一応認められるとしても、唯一回の更新ののち、被控訴人Y3については当初の契約が更新されないままで、各労働契約の期間満了に先き立ちこれを通知されたのであって、いずれにしても更新が自らの労働契約につき重ねられたものでなく、かつ、本件は昭和五二年三月の契約期間満了前わずか一年七か月内に設置開園された保育園に勤務する労働者についての事案であり、更新の慣行も一応認め難く、しかも各被控訴人が右保育園を設置した社会福祉法人の交付される措置費及び補助金の枠内で人件費を支出すべく措置児の年令構成の変動に即応して雇傭量の調整をはかる必要から雇用された臨時保母であって、契約締結に合理性を欠くといえず、正規保母と異り、児童を年令階層別にわけた組の責任者としない者であることは前叙したとおりであり、(証拠略)中、各被控訴人の採用に際し控訴人側に長期継続雇用、正規保母への登用を期待させるような言動があった旨の部分は、(人証略)に照らして、採用できず、他にこれを一応認めるだけの疎明はないから、前叙期限付労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない実情で継続していたと一応認めることは困難であり、したがって控訴人の契約の本件更新拒絶に実質上解雇の法理の適用があるとし、これを前提としてなす各被控訴人の更新拒絶(傭い止め)無効の主張はいずれもその余の点について判断を加えるまでもなく、その前提においてこれを採用すべき限りではない。