全 情 報

ID番号 03307
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 中小企業育成会事件
争点
事案概要  勤務態度不良、協調性の欠如等を理由とする解雇を有効とした事例。
参照法条 労働基準法2章
解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1979年7月18日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ヨ) 685 
裁判結果 却下
出典 労働判例327号72頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
〔解雇-解雇事由-協調性の欠如〕
 そこでつぎに、申請人に解雇事由が存したか否かにつき判断するに、労働保険事務組合は事業主の便宜を図るとともに、これを通じて政府管掌の労働保険事務を一括処理して、制度の目的達成に貢献する公共機関的側面も併せ有するものであり、公共職業安定所や労働基準監督署等の関係官署との連携なくしては、その円滑な業務運営を期し難い。
 従って、被申請人はその業務遂行上、会員及び関係官庁との信頼関係を保持することが不可欠であり、被申請人従業員とりわけ右両者共に接する職務に就いていた申請人としては、これらの点に留意してその職務を果たす必要があったというべきである。
 ところが、前認定にかかる申請人の勤務状況を通観するに、一面では職安の係官に対しその態度を注意したり、被申請人に就業規則の作成や残業協定の締結を迫るなど、自己が正しいと信ずる事に対しては積極的な姿勢が窺えるものの、反面、前記二(二)のとおり種々の問題を起こし、依頼主との連絡を密にとらないで事務を処理するため督促の電話が頻繁にかかってきたり、時には独断で手続を放置したこともあり、また、会員や官庁の係官に非礼な態度で接して不興を買うなど、自己中心的、恣意的な姿勢も目立ち、しかも上司の再三の注意にもかかわらず、容易に右就労態度を改めようとしなかったのであるから、申請人の執務姿勢を全面的に是とすることはできない。
 また、被申請人は全部で一〇名前後の従業員を擁するのみの小規模な団体であり、さらに申請人の所属した事務部門に限れば、五、六名の事務員しかいなかったのであるから、従業員相互の協調をより要求される職場であったものと認められる。
 しかし、前認定のとおり申請人は協調性がなく、同僚の女子事務員や申請外Aらと反目しあい、直属の上司であるB事務長の指導、命令にも素直に従わず、遂には申請人に対する同僚間の不満が高まり、B事務長も申請人の指導に責任が持てないと言明するに至ったのであるから、この点についてみても申請人の態度に問題があったといわざるをえない。
 これを総合するに、申請人は自己の正しいと信ずる主張や姿勢を貫ぬくあまり、他との融和を欠き、その結果、会員や関係官庁との信頼関係を損なう恐れを生じさせ、かつ、職場内の秩序を乱して被申請人の業務を阻害したものというべく、被申請人が、申請人について従業員として著しく適格を欠くと判断したことは相当であり、そして、被申請人には申請人を遇するに他に適当な職務はなく、被申請人が申請人を解雇相当と判断したことはやむをえないものと認められる。
 また、本件解雇事由は前認定のとおりであり、申請人の無断遅刻は一事情にすぎず、申請人が就業規則の作成や残業協定の締結について意見を述べたことを解雇の原因としたとも認め難いうえ、右のとおり本件解雇事由が相当なものである以上、本件解雇が権利濫用であるという申請人の主張は認められない。