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ID番号 03352
事件名 懲戒処分無効確認等請求事件/損害賠償金請求事件
いわゆる事件名 新潟放送事件
争点
事案概要  会社の守衛が組合事務所に侵入したことに抗議し追及活動を行ったことが正当な守衛業務を防害したものであるとしてなされた組合役員に対する出勤停止三日の懲戒処分の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
裁判年月日 1978年5月12日
裁判所名 新潟地
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ワ) 583 
昭和48年 (ワ) 375 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 時報904号112頁/労働判例299号46頁
審級関係
評釈論文 角田邦重・労働判例302号4頁/角田邦重・労働判例304号4頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
 【1】前記四で述べたとおり、A守衛の本件事務室立入行為は正当な行為と言えないこと、【2】原告組合の執行委員長である原告X1、及びその執行委員である原告X2らが本件事務室に不法立入したA守衛に対し、原告組合の独立性を守るため本件立入行為の目的、同守衛の不審な行動等を追求し、今後本件事務室に立入らないよう求めたことは、原告両名の組合員個人としての行為であると同時に原告組合としても当然取るべき行動であると解されるから、原告両名の右行為は労働組合法第七条第一号の「労働組合の正当な行為」と解されること、【3】前記《証拠略》によると、原告両名らはA守衛に対し本件立入行為を追求していた際、同守衛が黙りがちで答えなかったりしたので、同守衛に「こら守衛、犬」等一部穏当でない発言があり、時々声を荒らげて同守衛を難詰したり、カウンターを拳で叩いたりしたことは認められるが、その言動自体を把えて脅迫つるしあげ行為とまで解することはできず、前記四認定の事実、その中でも以下の事実、即ち原告両名らは同守衛に何らの手出しもしていないばかりか同守衛が電話応待のため守衛室への出入することを妨害もせず、同守衛が守衛室に入ってからも守衛室に勝手に入らずカウンター越しに話をしていたのであって、仮に同守衛が不当な脅迫つるしあげを受けているのであれば電話をかけてきたB人事部長、守衛室にいたガードマン、隣室で宿直している宿直管理者及び退社している被告の従業員らに助けを求めることが容易であるのに同守衛はそうした行動もとろうとしなかったこと等を考慮すれば、原告両名ほか一名が同守衛を脅迫つるしあげたと解することは躊躇せざるをえず、むしろ全体的に観察すれば原告両名は激昴はしたものの節度をわきまえ理にかなった質問ないし要求をしているとみるのが相当であること、【4】《証拠略》によると、A守衛は午後一〇時頃からタイムカードの変更業務の実施予定だったのが、原告両名らの右追及によりその応待に時間をとられ原告両名らが帰った午後一一時以後も精神的に疲労して右仕事に手がつかず、ようやく仮眠時間になる午前一時から午前二時頃までかかってやっと仕上げたが、その業務終了後も同守衛は仮眠できなかったことが認められ右認定に反する証拠はない。右認定事実によれば、守衛業務が円滑に遂行できなかったのであるが、この原因はこれまで述べたとおりA守衛が守衛業務に名を借りて違法に本件事務室に立入ったことに起因しているのであるから、同守衛が原告組合の組合員から違法立入行為を追及されたことにその責任を負わせることは適当でないと解されること、以上の【1】ないし【4】の理由によれば本件懲戒処分はその処分理由がないに等しいものと言わざるを得ないから、本件懲戒処分は懲戒権の濫用として、また原告両名の労働組合の正当な行為をしたことの故をもって不利益な取扱いをした不当労働行為(なお後記六の被告の責任で述べたところを参照)として違法、無効と解するのが相当である。