全 情 報

ID番号 03362
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本アジア航空事件
争点
事案概要  航空会社が、従業員からの自己都合による留学のための一年六カ月の休職申請を不承認としたことに対して、右休職の承認についての仮処分が申請された事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 休職 / 留学休職
裁判年月日 1978年7月21日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和53年 (ヨ) 5305 
裁判結果 却下
出典 労働民例集29巻4号551頁/労経速報992号25頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休職-留学休職〕
 就業規則四五条によれば、同条に定める休職事由が発生した場合、被申請会社が従業員に対し休職処分を命じ得ることは明白である。そして同条六号にいう従業員の自己都合による休職申請については、同号が休職事由として「やむを得ない事情」と包括的に表現していることから明らかなごとく、その性質上種々の事由があり得るから、被申請会社が従業員の自己都合を理由とする休職申請につき承認すべき義務を負つているものとはいえず、休職申請を承認すべきか否かの裁量は被申請会社に許されているものと解される。ところで、従業員の自己都合による休職事由の一つである留学休職については特に運用基準四五条中に承認基準が列挙されているが、これはあくまでも承認のための一応の方針を定めたものにすぎず、これをもつて留学休職につき承認基準に合致した場合被申請会社は必ず承認すべき義務を負うものとは解されない。
 (中略)
 前記認定事実二2によれば、A会社においては、昭和五二年四月以前においても、留学休職申請については、会社が業務上の都合をも考慮し、その裁量により承認の要否を決していたことが認められ、運用基準四五条四項一号ないし六号の要件該当者には必ず休職を承認する旨の運用慣行が存したとは認め難い。被申請会社においては、前記二3において認定したとおり、本件申請があるまで留学休職申請はなく、実際に留学休職に関し就業規則を解釈運用することはなかつたが、昭和五二年四月ごろより会社の定配員の逼迫状況、業務内容、A会社において語学研修のための留学休職が所期の効果をあげていないこと等を総合考慮し、A会社にならい就業規則の運用につき、語学研修のための留学は会社業務と密接な関連をもたず、その休職申請は原則として承認しないとの方針をとつたものであり、一般的に自己都合による休職が会社の定配員状況等その業務運営に相当の影響を与えることを考慮すれば、右の方針は決して不合理なものということはできない(なお、昭和五二年四月以前においては、被申請会社においてもA会社と同様語学研修のための留学が業務に密接に関連すると解される余地があつたことが窺われるが、本件申請以前には全く先例がないうえ、前記方針は語学研修のための留学休職に関する就業規則の運用に関するものであり、決して不合理なものとはいえないから、これを従来の運用の変更とみうるとしても従業員の既得の利益を奪う違法かつ不当なものとはいえない。)。従つて、被申請会社が、初めての事例であつた申請人の留学休職申請を右方針に従い不承認としたことは、前記二1認定の申請人側の事情を考慮してもなお、その裁量の範囲内に属するものといわざるを得ず、他に本件申請において被申請会社が承認義務を負うと認むべき特段の事情も見出し難い。