全 情 報

ID番号 03376
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 米軍立川基地事件
争点
事案概要  在日米軍立川基地に勤務する日本人従業員の、米軍の業務の縮少に基づく余剰人員の発生を理由とする整理解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
裁判年月日 1978年12月1日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 9339 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1003号7頁/労働判例309号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕
 本件人員整理の担当官であるAは昭和四七年九月一一日頃、当時立川、横田両基地等に勤務する日本人従業員の関係事務を取扱っていた立川労管所長Bに対し、本件人員整理は米軍の業務の縮少に伴う余剰人員の発生に基づくものである旨明らかにしていること、なお米国国防費の大幅な削減に伴い立川労管所管の基地等においても昭和四四年以来多数の日本人従業員が解雇されて来たが、昭和四七会計年度中には合計一、四三七名にのぼる人員整理がなされ、本件人員整理も米軍の定員削減方針の一環としてなされたものであることが認められる。そして右事実によると本件人員整理の必要性は一応首肯し得ないわけではない。
 のみならず(証拠略)に前記当事者間に争いのない再抗弁冒頭前段および中段の事実を綜合すると、前記のごとく被告は在日米軍に対しその要求する労務を提供する義務を負い、基本労務契約に基づいて従業員を雇傭しているけれども、従業員の実質上の使用者は米軍であるため(いわゆる間接雇傭)、人員整理の必要性の判断、整理されるべき員数、職種の決定は米軍においてこれをなし、被告は米軍の申出により法律上の雇傭主として人員整理を行う立場にあるにすぎないことが明らかであり、右のような被告の立場および人員整理の性質等諸般の事情を考慮すると、人員整理の必要性の判断は能うかぎり米軍の判断を尊重しなければならないものであって特段の事由のないかぎり、被告はこれに従うほかはないものといわなければならない。
 (中略)
 被告は米軍の要求により、その必要とする労務を補償を得て提供するものであり、従って使用者である米軍から人員整理の要求があった場合、政治的な折衝を行う余地はあるとしても、最終的には整理人員に相当する労務の提供を中止し、その分の補償を受領する権利を失うに至るものであるから、自己の費用をもって従業員の雇傭を継続すべき特別の事情のないかぎり、これを解雇せざるを得ない立場にあるといわなければならず、これらの事情に、本件人員整理につき前記のように一応の必要性が肯認される事実を併せ考慮すると、結局被告が原告に対して示した解雇理由および解雇に至るまでに被告がとった措置も客観的に是認しうるものであって、これをもって解雇権の濫用ということはできず、本件人員整理ひいては本件解雇が必要性なくしてなされたものであり無効であるとの原告の主張は採用しない。