全 情 報

ID番号 03414
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 島崎コンクリート事件
争点
事案概要  コンクリートブロック製造作業中の作業員が右機械にはさまれて死亡した場合につき、使用者に安全配慮義務違反があったとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1977年10月4日
裁判所名 高知地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 519 
裁判結果 一部認容・棄却
出典 時報886号79頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 1、原告らは被告には安全保護義務違反があるから債務不履行責任を免れないと主張するので検討する。
 (一) 原告らは起動スイッチの位置不適当、照明設備不充分、作業台と機械との間隔及び高さ不適当等の点について、被告には安全保護義務違反がある旨主張するけれども、本件事故の発生原因は前認定のとおり亡Aが面鉄板を伏せて一旦後に下がったのに再び前に出ていったことに起因すると認められるから原告らのこれらの主張はいずれも本件事故の発生とは因果関係が認められないからこの点に関する原告らの主張は理由がない。
 (二) 次に原告らは本件成型機は新型機械設備であるから特に労働者に対し機械等の危険性、安全装置の取扱い方法、作業手順に関し、安全衛生教育等を実施しなければならない義務を有するにも拘らず被告会社は亡Bに対し充分な安全衛生教育をしていなかった債務不履行がある旨主張する。
 前記認定事実によると亡Bが面鉄板を伏せる作業に従事したのは事故前僅か三日間位であり、右主張のような充分な安全衛生教育を実施した形跡は認められない。また亡Bは被告会社の工場長らより起動スイッチが押された後は面鉄板が完全に伏せられていないことに気付いても絶対に本件成型機に近寄ってはならない旨注意をうけていたとしても、一方では面鉄板を完全に伏せなければ良い製品ができないから注意するよう指導をうけていたことは容易に推認されるところであるから初歩的な注意とはいうものの、つい一旦後に退がってからも伏せ直すために再び前にでる過ちをおかし易いものであり、しかも一度間違うと生命にかかわるだけに被告会社としては亡Bに対し或程度の期間をかけて充分な安全衛生教育を施すとともに、作業標準を定めて、複数の人間で本件成型機の操作をすることは危険であるから、原則として一人で作業することにするとか、起動スイッチを押す者を指名する等の措置をしておれば本件事故発生を防止出来たものと認められる。これらを怠った被告会社は民法第四一五条により本件事故によって原告らが被った損害を賠償する責任がある。