全 情 報

ID番号 03417
事件名 雇用関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 日本赤十字社事件
争点
事案概要  「男子従業員については六〇歳、女子従業員については五五歳を超えた者」を整理解雇の対象者とする基準により、病院の単純労働に従事する女子従業員を解雇したことにつき、右整理基準には合理性があり、公序良俗違反にはあたらないとされた事例。
参照法条 労働基準法3条
日本国憲法14条
民法90条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 性と整理解雇基準
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1977年11月8日
裁判所名 佐賀地唐津支
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ワ) 19 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集28巻5・6合併号496頁/時報881号149頁/労働判例286号69頁/労経速報968号3頁
審級関係
評釈論文 中村和夫・労働判例308号27頁/中村和夫・労働判例310号4頁
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-性と整理解雇基準〕
〔解雇-整理解雇-整理解雇基準〕
 五、原告らは本件病院において男子六〇歳、女子五五歳を超えた者に退職を求めているのは、性別による差別待遇であり、本件解雇は無効であると主張するが、成立に争いのない乙第四八号証(骨組織の加齢に関する研究)、第五〇号証の一、二(筋力の性差について)、第五一号証(血液学における加齢の問題)、第五二号証(加齢による視覚単純反応時間の変化)、第五四号証(女子の定年制)、第五七号証の一、二(日本人の体力)によると、女子は骨格、筋力、赤血球数、血色素量、反応時間等からみてその体力は男子に比して劣つており、二五種の生理的機能検査の結果を平均値で年齢毎に表わすと、女子は五〇歳から五五歳までの間において生理的機能が著しく低下し、五五歳の女子の機能は七〇歳以上の男子のそれにほぼ等しいものとされていることが認められる。右の事実と本件病院における原告らの職種は所謂単純労働であつて、その作業は短期間に習得でき、年月の経過と共に熟練の度を加えてゆく性質のものでないこと、本件病院においては年功序列式の賃金体系をとつているので、提供される労働と支払われる賃金は年月の経過と共に次弟にバランスを失つて行くことを併せ考えると、本件解雇の際の整理基準は本件病院の実情に照し合理性があると解するのが相当であり(A赤十字病院における昭和四四年度退職勧奨による退職者も同じ基準であつたことは乙第四五号証の一、二により推認できる。)、従つて男女差別は公序良俗に反するから本件解雇は無効であるとする原告らの主張は採用しない。