全 情 報

ID番号 03478
事件名 地位保全等仮処分事件
いわゆる事件名 光文社事件
争点
事案概要  出版社の争議において社屋乱入、職場占拠、営業妨害等を理由として労組員が懲戒解雇されたケースでその効力が争われた事例。
参照法条 労働組合法7条
労働組合法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1975年4月16日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ヨ) 2415 
裁判結果 認容
出典 タイムズ321号97頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 前記社屋乱入・職場占拠、営業妨害事件は、前述したように、計画的で、会社側にこの事件の発生それ自体について直接の落度はなく、行為の態様も悪質であり、会社の名声を著るしく失墜する行為である。しかし、組合員に対する全員自宅待機命令、続いて組合員の一部に対する就労命令、更に、組合掲示板のビラの撤去、と会社側の一連の功撃に対して、追いつめられた組合側が反撥し、反撃の行動に出たのはやむを得ないといえる面がなくはなく、いわゆる社屋の全面占拠といつても、午後一時四五分頃から同一時五〇分頃までの五分間位の短時間であり、玄関ホール付近から二階に上る階段あたりまで坐り込んだ時点(午後一時三〇分頃)からみてもせいぜい二〇分位の出来事であり、その間、四階で就労中の経理部員を除いて社員の大半は編集取材等のため不在であり、会社側の実力による制止を排除して敢行されたものでもない。
 以上述べたような諸事情を考え合わせると、この一件だけを把えて懲戒解雇をもつて臨むことは、著るしく懲戒権行使の範囲を逸脱し、権利の濫用にあたるというべきである。仮に前述したAに関する記事が懲戒事由に該当すると考える余地があるとしても、前掲疎甲第一号証の六から明らかなように、会社は五月四日の大衆団交において、「昭和四三年九月管理職者を集め、極秘裡に開いた『館山会議』は、元日経連法規部長Bら三人を講師に招き組合対策を目的としたものであつたことを認めます。」という内容の確認書を組合と交換し、前記記事が掲載された六月一日当時は、会社において確認事項の全面破棄を通告する以前であるから、以上の経緯を考慮すると、右記事をしんしやくしたとしても、前記結論に変りはない。
 したがつて、本件懲戒解雇はいずれも無効であるといわざるを得ない。