全 情 報

ID番号 03486
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 国労EL.DL助士廃止反対闘争解雇事件
争点
事案概要  国労のEL.DL助士廃止反対のストライキを計画、指導、実施した責任者として公労法一八条により解雇された国鉄職員が従業員としての地位の確認と未払賃金の支払を請求した事例。
参照法条 公共企業体等労働関係法17条
公共企業体等労働関係法18条
労働基準法3章
労働基準法26条
民法536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1975年7月17日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ワ) 6189 
裁判結果 一部認容・棄却(控訴)
出典 時報785号20頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇権の濫用〕
 本件争議行為の目的、動機、および原告の役割、具体的な行為の態様、程度、その組合員に対する影響力、ならびに、その余の争議参加者に対する処分との比較衡量などからすれば、原告に対する本件解雇処分は著しく不合理で妥当性を欠く苛酷な処分であり、解雇権を濫用した違法無効なものといわねばならない。
〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 原告の如く、被告より不当解雇を受けた職員については、被告の個別的な昇格、昇給の意思表示をまつまでもなく、右解雇なかりせば当然昇格、昇給しえた時期に昇格、昇給したものと取扱うのが相当である。なんとなれば、使用者(被告)の責に帰すべき事由により不当な解雇を受けた職員が、解雇の意思表示の効力を争っている間、これと矛盾する昇格昇給の意思表示を受ける余地はなく、そのため、事後、他の一般職員といわれなき差別を受けて当然受けるべき昇格、昇給の利益を享受できないとすれば、それは極めて不合理であり、結果的にみて解雇の無効により被った不利益を実質的に完全には救済されなかったことに帰するからである。とくに、本件の原告の如く、その昇給基準が全く客観的に定まり被告の裁量の入りこむ余地がないとか、原告より下位のものまで既に昇格していることが明らかな場合には、右の不合理性は一層顕著なものがある。
〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 労働基準法二六条は労働者の生活を保障するため労務の提供等を要しないで賃金の六割に相当する金員を休業手当として使用者に請求できる権利を認めた労働者保護の規定であって、民法五三六条二項による反対給付請求権(本件にあっては労働者の賃金請求権)を制限するものではないと解すべきである。