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ID番号 03508
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 鹿島建設・大石塗装事件
争点
事案概要  下請会社の従業員が高所から墜落死亡した場合につき、元請会社および下請会社の双方に安全保証義務違反があったとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1974年3月14日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ワ) 1050 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報749号109頁/タイムズ311号228頁
審級関係 上告審/最高一小/昭55.12.18/昭和51年(オ)1089号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 私法上、雇傭契約における使用者の労働者に対する義務は単に報酬支払義務に尽きるものではなく、当該雇傭契約から生ずべき労働災害の危険全般に対して人的物的に労働者を安全に就労せしむべき一般的な安全保証義務を含むものであって、この点、労働基準法、労働安全衛生規則その他の労働保護法令が行政的監督と刑事罰をもって使用者に対し労働災害からの安全保護義務の履行を公法上強制するのと法的側面を異にするものと解すべきである。
 しかして使用者の労働者に対する私法上の安全保証義務は独り雇傭契約にのみあるものではなく、仮令それが部分的にせよ、事実上雇傭契約に類似する使用従属の関係を生ぜしめるべきある種の請負契約、例えばいわゆる社外工ないし貸工の如く、法形式的には請負人(下請負人)と雇傭契約を締結したにすぎず、注文者(元請負人)と直接の契約を締結したものではないが、注文者請負人間の請負契約を媒介として、事実上、注文者から、作業につき、場所、設備、機材等の提供を受け、指揮監督を受けるに至る場合の当該請負契約にも内在するものであって、かゝる契約は少くとも、注文者において請負人の被用者たる労働者に対し、被用者たる第三者のためにする契約或は請負人の雇傭契約上の安全保証義務の重畳的引受として、直接、その提供する設備等についての安全保証義務を負担する趣旨の約定を包含するものと解するのが相当である。
 そして右法理は、契約法における信義則上、請負人が注文者との関係において必ずしも労働基準法第六条(中間搾取の排除)ないし職業安定法第四四条(労働者供給事業の禁止)等の禁止規定に違反せず、職業安定法施行規則第四条第一項所定の基準を満す程度の企業としての独自性を保有するものであっても変りはない。