全 情 報

ID番号 03528
事件名 懲戒処分取消請求事件
いわゆる事件名 神田郵便局事件
争点
事案概要  勤務時間中組合活動として腕章を着用した郵便局員の行為につき、職務専義務違反があり、郵便課窓口係から通常係への担務変更命令は適法であり、右命令を拒否して職務を放棄したことに対する減給処分が適法とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1974年5月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和47年 (行ウ) 48 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集25巻3号236頁/時報752号93頁/タイムズ312号158頁/訟務月報20巻8号78頁
審級関係
評釈論文 小西国友・ジュリスト592号103頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 (2) 成立に争いがない乙第五号証によれば郵政省就業規則二七条が、勤務時間中の組合活動を原則として禁止していることが認められ、これに反する証拠はない。右規定は就労時の組合活動が国公法九六条、一〇一条にも規定するように就労時の職務専念義務に違背し、又職員の服務上の規律につき、使用者の命に服すべきことと衝突することとなる点で、合理的根拠を有するものと言うことができる。原告は右規定で禁止される組合活動とは勤務時間中、職場を離れたりして就労しないような場合をいい、勤務を離れず且つ労働力提供に何らの支障を与えない本件腕章着用のようなものは本条に含まれないと主張する。しかし本件腕章着用が組合の団結誇示の行為であることは原告も自認するところであり、腕章着用のままの就労は前判示の如く郵政省就業規則二七条の規定に違反することは明らかであるから、この点に関する原告の主張はすでにこの点において採用できないものであるのみならず、前記(二)で認定したとおり窓口係と通常係との入替えには原告の同意は不要であり、且つ両者の仕事内容に利益、不利益の区別、差異を認め難いのであるから、本件担務変更命令の動機如何を問わず、右命令をもつて不利益取扱とはいえず何ら不当労働行為には当らないというべきである。
 (3) しからば神田郵便局長が自ら或は部下を介し原告に対し腕章の取りはずしを命じたこと及び原告がこれを拒否したことを理由として本件担務変更命令をなしたことは何ら違法ではない。
 (中略)
 (3) ところで上司の再三の取りはずし命令にも拘らず郵政省就業規則二六条、二七条に反し腕章着用の上窓口係として就労を強行しようとしている原告に対し、神田郵便局長がなした通常係への前記担務変更命令は、前記(二)、(三)判示のとおり何ら違法ではないのであるから、右担務変更命令に伴い、その勤務時間も各規定に従い当然従来の窓口係のそれとは別のものとならざるを得ないことはやむを得ないことであつて、本件勤務時間指定は前記協約付属覚書一九項但書の規定に準ずるものとして、右協約の趣旨に何ら反するものではないと解するのが相当である。この点に関する証人井上章の証言部分は前記判示に照らし、当裁判所の採用しないところである。
 (五) 原告は本件懲戒処分は権利の濫用である旨主張するけれども、これを認めるに足る証拠なく、原告の右主張は採用するに由ない。
 (六) 以上を総合すれば、原告が上司の職務上の命令を無視し、その職務を放棄したことは明らかに違法であり、右職場秩序をびん乱する行為は、国公法九八条一項、九九条、一〇一条一項にそれぞれ違反し、同法八二条各号に該当するものといわざるを得ない。