全 情 報

ID番号 03543
事件名 配転命令効力停止金員支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 小山工業事件
争点
事案概要  慢性肝炎にかかった造船会社の下請企業の工員が、健康上困難な現場足場作業へ、さらに船機装勤務へと配置替えしたことにつき、右二つの配転命令の効力停止の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転・出向・転籍・派遣と争訟
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1974年11月28日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 昭和49年 (ヨ) 3023 
裁判結果 一部認容
出典 時報772号99頁
審級関係
評釈論文 赤沢博之ほか・労働法律旬報877号73頁
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 前記認定事実によれば、本件配転命令についての会社の業務上の必要性乃至合理性は全く認め難いものといわざるを得ない。被申請人もまた本件配転命令は昭和四九年八月二九日付で撤回したと主張するのみである。
 そうすると、本件配転命令は、不当労働行為に該当して無効であるとの申請人の主張について判断するまでもなく、申請人に肉体的、精神的な苦痛を与えるためにのみなされたものと認めるほかないから、明らかに人事権の濫用であって、無効である。
〔配転・出向・転籍・派遣-配転・出向・転籍・派遣と争訟〕
 会社は、昭和四九年八月二九日付で、あるいは、同年九月二四日付で、申請人に対し船機装勤務に配置転換する旨の意思表示をした(以下、第二次配転命令という。)と主張して、申請人の原職である現場足場パトロール作業への就労を拒否していることは、被申請人の自認するところである。
 そこで、第二次配転命令の効力について検討するに、前記のとおり違法な本件配転命令を申請人に対し強行した会社としては、最初の配転命令によって生じた紛争をそのままにして、もはや申請人の合理的な意思に反して新たな第二次配転命令を出すことは信義則上許されないものと解するのが相当である。したがって、第二次配転命令の存否について検討するまでもなく、右意思表示はその効力を有しないものといわなければならない。