全 情 報

ID番号 03552
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 熊本県職業訓練所事件
争点
事案概要  地公法二八条二号にいう「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合」にあたるとして休職処分とされた職員が右処分を違法として休職中の給与等を請求した事例。
参照法条 地方公務員法28条2号
医師法20条
体系項目 休職 / 傷病休職
裁判年月日 1974年12月25日
裁判所名 熊本地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ワ) 627 
裁判結果 (確定)
出典 タイムズ321号84頁
審級関係
評釈論文 荒木哲也ほか・労働法律旬報879号71頁/佐藤進・ジュリスト608号123頁
判決理由 〔休職-傷病休職〕
 医師法二〇条によれば、医師は自ら診察しないで診断書を交付してはならないと規定し、これに反する行為は同法三三条により処罰されるものと定められているのであるから、A医師が前記認定のように原告を診察しないで診断したことは明らかに違法というほかはない。
 被告はこの点につき、本件休職処分は前記A、B両医師の連署の診断書によつてでなく、C医師の診断書とB医師の診断書に基づいてなされたものであると主張するが、C医師が本件休職処分に当り知事およびその補助機関から原告につき診断をするよう指定をうけたとの証拠はなく、また、〈証拠〉によれば、同医師が原告に交付した昭和三八年九月一三日付診断書は、原告が職場に復帰することを前提として作成したものであり、休職処分を予想したものではないから右診断書を参考に供したことをもつて、知事が前記条例の趣旨に従つてC医師を指定して原告を診断せしめたと解することはできない(もし、そう解しなければ、前記条例の規定は任命権に対する訓示規定たるに止まり、休職者の身分保障をはかる趣旨を没却することになろう。)。
 してみれば、本件休職処分は、前記条例所定の任命権者による指定医師二名の診断を経ることなく行われたものというほかなく、その手続において、すでに条例に反した違法がある。
 (中略)
 地公法二八条二項一号の休職処分は、心身の故障のため長期休養を要する場合になされるものであるから、処分当時において長期休養を要する心身の故障が現在および将来にわたり存すると認定すべき状況のあることが必要であり、たとえ処分前に長期休養を要した疾病があつても、処分時に治癒ないし軽快して長期休養を要する状態になければ休職処分をすることができない筋合であり、しかも休職処分は遡求発令できないこと前記のとおりである。
 (中略)
 本件のように、医師が原告の当時の職業、勤務条件等に照らして作業時間を一日四、五時間または午前中とすることが望ましいと診断した場合は、いわば半勤務、半休養により暫らくの間経過を観察し、出勤後の状況を精査し、かつ、医師の診断の変化に応じて全勤にするか、それとも休養を要するものとして休職に付するかを決するのが相当であり、通常の勤務ができないからといつて、直ちに休養を要すると速断することは、休職処分制度についてさきに説示したところに照らし相当な判断とは認められない。