全 情 報

ID番号 03583
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 川崎化成工業事件
争点
事案概要  人員整理につき、組合との誠意ある協議を経ず、かつ不明確な整理基準にもとづく解雇が、基準自体の当否を論ずるまでもなく合理性を欠くとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1973年8月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ヨ) 2249 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 タイムズ300号323頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇基準〕
 五 前認定のとおり、二〇〇人の希望退職者が出た昭和四一年二月二三日の時点で、残留予定人員八〇〇人を超えた余剰人員は、二二人と確定した。さすれば、会社としては、当初から会社が主張していた様に真に下請作業員を解約し、社員の減員を妨ぐという最も合理的な立場をとつていたものとすれば、前記認定のとおり、この時点で下請契約の更改中止に未だ充分日時を残しており、且つ右更改中止は容易であつたのであるから、右二二人分(最終的には本件申請人ら一七人)に相当する下請の整理という当初の大方針を再検討し、再採用する余地があり、及それが最も妥当であつたと解される。しかるに会社は右の点につき一顧も与えるところなく、前記認定のとおり、第五回団体交渉で組合に具体的に提示した希望退職募集基準七項目のうち二項目を変更し、右余剰人員二二人はこれに該当するとして、再度応募を求めて退職を勧告し、そのうち五人の希望退職者が追加発生した同年二月二八日に、残つた一七人につき、本件解雇に及んだもので、この様な会社の態度は、前記各認定事実と綜合して考察すれば、到底是認し難いところである。
 六 会社は本件解雇につき設定した基準には合理性があると主張するが、前項のとおり右基準は組合との話合いもなく、他の基準項目に該当する者の有無についても不明確のまま余剰人員二二人という枠を念頭に事後に設定されたものと推認されるから、右基準の設定に基いてなされた解雇それ自体、既に妥当性、合理性を欠くものと認められ、右基準の内容が合理性を有するか否かを論ずるまでもなく会社の主張は失当である。之を要するに玉田ら一七人に対する本件解雇は、すべてその合理性を有しないものと解するのを相当とする。
 七 申請人X1ら一七人に対する本件解雇が前記のとおり合理性を有しない以上、会社の右申請人らに対する解雇の意思表示は、正当な解雇理由を欠くも飯として無効であるから、右申請人らは、依然として会社の従業員とし飯の地位にあるものと認められるところ、右申請人らのうち申請人X1、同X2、同X3、同X4、同X5、同X6、同X7の七人については、既に緊急命令により会社の職場に復帰し、同人らが受けるべき賃金、その他の諸給与相当額の支払を受けているのであるから、右申請人ら七人の本件地位保全の仮処分申請は、仮処分制度の趣旨に照らし、その保全の必要性を欠くものとして却下を免れないものと云うべきである。