全 情 報

ID番号 03589
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 イースタン観光事件
争点
事案概要  自衛隊への体験入学は従業員教育としての雇用契約にもとづく業務命令であるが、身体不調等を理由に無断帰宅して訓練を放棄したことに対する諭旨解雇は重きに失し、解雇権濫用として無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
民法1条3項
民法623条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働義務の内容
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1973年10月15日
裁判所名 横浜地
裁判形式 決定
事件番号 昭和48年 (ヨ) 652 
裁判結果 認容(確定)
出典 時報731号102頁
審級関係
評釈論文 山口浩一郎・ジュリスト594号123頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働義務の内容〕
 C 申請の理由3、ロ、aの解雇無効事由について審案する。
 就業規則に体験入隊の定めがないことは当事者間に争いがないけれども、疎明資料によると、被申請人が二、3で主張する事実は疎明される。
 されば、体験入隊を命ずる業務命令は、雇傭契約に基づくものであって、根拠を有するものである。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 疎明資料によれば、被申請人が二、1で主張する事実ならびに規則、規程の存在する事実が疎明される。
 また、これよりさき昭和四八年六月一二日申請人が無断欠勤して課長から注意を受けたことは申請人の明らかに争わないところである。
 であるから申請人の自衛隊訓練放棄行為は、被申請人の就業規則七二条(2)の「業務上の義務に違反したとき」にあたり、かつ同懲戒規程六条(14)にあたり、申請人の無断欠勤行為は同懲戒規程六条(2)の「勤務に関する……届出を怠……」ったときにあたると解される。それゆえに、この二つの行為を総合して同懲戒規程六条に基づき申請人を諭旨解雇処分に付したことは適法である。しかし、申請人は入隊当日における午後の訓練を終了したこと、申請人はとにもかくにも講話および映画の時間に出席したこと、この出席につきスリッパを履いてなぜ悪いか、なぜ靴を履かなければならないかが疎明されないこと、また疎明資料によれば申請人は身体の不調を理由に講話を欠席したい旨述べたが、教官がその真偽を充分確かめることなくこれを拒絶したこともあって、訓練を続けることに嫌気がさして無断で自宅に帰ったことが疎明されること、採用以来約四か月間に無断欠勤が一回にすぎないことなど諸般の情状を考量すると、申請人に責任感の欠如があり、また被申請人の自衛隊に対する信用失ついが起るとするも、申請人を被申請人の企業外へ放逐し、労働関係を絶つこととなる諭旨解雇の処分は重きに失する。すべからく、申請人を被申請人の企業内に留めおいて反省の機会を与えしめる、もっと軽い処分に付するのが相当である。
 以上の説示により、本件諭旨解雇には正当の事由がないというべきであって、諭旨解雇処分は無効である。