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ID番号 03599
事件名 雇用関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 在日米軍基地事件
争点
事案概要  沖縄復帰前にアメリカ合衆国軍隊に直接雇用されていた日本人従業員について、復帰のさいに日本国が包括的に雇用主たる地位を承継するものではないとして、雇用関係存在確認請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約の承継 / その他
裁判年月日 1973年12月19日
裁判所名 那覇地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ワ) 8 
裁判結果 (控訴)
出典 訟務月報20巻5号33頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約の承継-その他〕
 原告らは、右の改定二四一号協定を根拠に、被告が直接雇用従業員につき雇用主たる地位を包括的に承継した旨主張するが、(証拠省略)によつて、原告らの右の主張を肯定するに足りる事実を認めることはできない。
 かえつて、(証拠省略)によれば、改定二四一号協定は、昭和四七年五月一四日現在において直接雇用従業員であり、同月一五日に、右協定のもとの従業員となる者を移行従業員と定義し、移行従業員の雇用手続については、原則として基本労務契約第一章B節の各規定の適用を認めたうえ、同節中雇用前の応募者紹介、保安調査および健康診断に関する規定の適用を排除していることが認められ、また、(証拠省略)によれば、基本労務契約は、その第一章B節に従業員の雇用手続を定め、従業員の提供を求める労務の要求については、指名要求方式(差し向けるべき従業員を指名する方式)と応募者紹介方式(雇用可能な者の中から適格者を差し向ける方式)を定めていることが認められるのであつて、右の事実関係のもとにおいては、改定二四一号協定は、直接雇用従業員について指名要求方式による雇用手続を予定していたものというべきである。
 なお、(証拠省略)によれば、在沖米軍は、沖縄の復帰前に、直接雇用従業員に対し、間接雇用制度への移行と題する書簡を発送し、直接雇用従業員としての身分が昭和四七年五月一四日の業務終了とともに終る旨、および同月一五日付で間接雇用されるとの申出を日本国政府から受けることになる旨を通知したことおよび日本国政府と琉球政府は、同じく沖縄の復帰前に、直接雇用従業員に対し、間接雇用への切替について(意向照会)と題する書面を発送し、米軍との間の現在の雇用関係が沖縄の復帰の日の前日をもつて終了し、その後米軍に勤務するには、日本国政府との間に改めて雇用関係を結ぶ必要がある旨を通知するとともに、日本国政府による雇用について諾否の回答を求めたことが認められるのであつて、右の事実は、前段の認定判断を裏付けるに足りるものというべきである。
 2 前記1から明らかなように、被告とアメリカ合衆国政府との間に、直接雇用従業員の雇用主たる地位を譲渡する旨の合意があつたことを肯認することはできず、他に、右の雇用主たる地位の包括的な承継を肯定するに足りる法的根拠を見出すことはできない。