全 情 報

ID番号 03614
事件名 雇傭契約上の権利を有することの確認請求事件
いわゆる事件名 帝都高速交通営団事件
争点
事案概要  レッドパージされた者が一旦、「○○日付で依願退職する」と裁判上の和解をとげたのち、右和解を無効としてなお雇用関係の確認を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
民事訴訟法(平成8年改正前)203条
体系項目 退職 / 合意解約
裁判年月日 1972年3月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ク) 8773 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ279号252頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-合意解約〕
 本件和解の「原告らは、昭和二五年一〇月二八日付で、被告を依願退職したものとする。」という条項は、原告らと被告との間には、雇用契約が存在しないことを確定したものであるから、右雇用契約が依然として存在し、原告らが被告に対して雇用契約上の権利を有するという原告らの主張は、本件和解と相反する法律関係の主張ということになつて許されない。
 (中略)
 前記当事者間に争いない事実と、原告らが被告が昭和二五年一〇月二九日原告らに対してした解雇の意思表示が無効であると主張して、本訴被告を被告として提起した解雇無効確認請求訴訟において本件和解が成立したことから見れば本件和解中の「原告らは、昭和二五年一〇月二八日付で、被告を依願退職したものとする。」との条項の趣旨は、被告は先にした原告らに対する解雇の意思表示を黙示的に撤回し、改めて原告らと被告間の雇用契約を両者間で合意解除し、その効果の発生を昭和二五年一〇月二八日にさかのぼらせたものと解される。
 解雇の意思表示という形成権が行使されたが、それが無効である場合、意思表示の相手方がその意思表示を承認することによつて、無効な解雇の意思表示が有効になる理由もないから、原告らの主張する無効な解雇の承認とは、いかなる法律効果の発生をいうのか明らかではない。無効な解雇の承認によつて、解雇の効力を争わないことを約したという趣旨ならば、現に解雇の効力を争つていることと矛盾するし、何故に解雇の効力を争わない約束が無効となるかも理解できない。のみならず、本件和解は、解雇の意思表示の撤回を黙示的に前提としたものであつて、原告らが無効と主張する解雇の意思表示をそのままにし、原告らがこれを承認するという行為によつて成立したものでないことは、前認定により明白である。