全 情 報

ID番号 03619
事件名 懲戒処分取消請求事件
いわゆる事件名 静岡県教組事件
争点
事案概要  教職員の半日一斉休暇の争議行為のあおり行為等を理由に懲戒免職、停職、減給等の処分を受けた者が右処分の効力を争った事例。
参照法条 地方公務員法49条
地方公務員法37条
日本国憲法28条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1972年4月7日
裁判所名 静岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (行ウ) 26 
裁判結果 認容
出典 タイムズ277号91頁
審級関係 控訴審/03387/東京高/昭52. 3.15/昭和47年(行コ)35号
評釈論文 有吉保久・地方公務員月報107号55頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 同原告の右暴行は、いかにも相手の人格を無視した行為であつて、Aがこのためいちじるしい精神的苦痛をこうむつたであろうことは推察に難くないが、被告のいうように共謀の上の計画的なものとは認めがたく、むしろ闘争前夜の精神的緊張によつて、自制心が低下し、Aの態度を、分会長の地位にありながら執行部に協力せず、専ら自己保全を図るばかりか、かえつて組合員の団結を乱す行為に出たものとして、これに反撥する余り、自分たちが深夜まで奔走しているのにAは分会長会議にも出ないで何事もないかのように帰宅しているという憤慨にもかられて、感情を爆発させてしまつた結果であろうと推認される。もつとも本件休暇闘争当時教職員の争議行為が一般に違法とみられていたことは公知の事実であり、そういう情勢のもとではAが本件休暇闘争の実行に消極的であり、逃げ腰の態度しかとらなかつたとしても、それは通常人の態度としてやむを得ないものというべきで、また同人がBに電話したことも格別争議妨害の意図に出たものと認めるべき証拠はなく、原告Xがこれを裏切行為に当ると判断したことは、多分に感情的な誤解にもとづくものといえる。かつ、いかなる理由があるにせよ、前記認定のような暴力の行使が是認されるべき余地はないのであるが、一方原告Xは前記のように右暴行の疑いにより逮捕され、数日間身柄を拘束されたうえ、罰金の有罪判決をも受けているのであつて、右刑事上の強制捜査および処罰によつて自己の非行に対する十分な社会的制裁を受けたものと認められる。そのことと右暴行がそれ自体としては比較的軽微な行為であること、原告Xがかかる行為に出たのも、同原告の立場からすれば、Aを含む組合員全体の利益のために、組合の正式な決定にもとづいて、自己の個人的な利害をかえりみずに困難な争議行為の指導に当り、苦労を重ねてきた末のことであり、同原告がAに対して強い不満を抱いたことには、その当否は別として、人情としては理解できる面がなくもないことを考え合わせると、被告が同原告の右暴行とあおり行為等について同原告に対して懲戒処分をもつてのぞんだこと自体は正当というべきであるが、その具体的処置として懲戒免職を選択したことは、苛酷にすぎるものであり、裁量権を濫用したものといわなければならない。