全 情 報

ID番号 03628
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本ナショナル金銭登録機事件
争点
事案概要  春闘中に「C会社はアメリカの植民地だ」等のステッカーを貼ったこと、争議時に二〇分間程就労を阻止するピケをはったこと、会社構内に侵入しようとしてもみ合いになり守衛長らに負傷させたことなどを理由とする組合幹部の諭旨解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働組合法7条1号
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1972年5月29日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ヨ) 925 
裁判結果 認容
出典 タイムズ283号208頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 申請人両名を含む組合員等が本社内に入場しようとしたのは、支部所属の女子組合員が本社警備員に対し本社内の便所の使用を申入れたことが契機となつたことが一応認められるところであるが、さりとて申請人等デモ参加者において、もし便所の使用を許されたならば、単に本社内への入場がそれのみで終つていたかは、当日のデモの目的および当日までの闘争の経緯に照らしてにわかに速断し得ず、会社として前記のように本社内への入場後の事態を憂慮して、便所の使用を拒否したことは、右事情下において明らかに不当な処置とは言い難い。しかしてA労務課長およびB守衛長がそれぞれ申請人等を含む組合員等とのもみあいによつていずれも胸部付近に傷害を蒙つたこと前記のとおりであり、相手方に対する暴行、傷害行為はその程度が特に著るしく軽微な場合に、周囲の状況から闘争手段として正当化される場合が存することを全く否定し得ないが、本件においては、デモの程度を越え、しかも本社内への入場を拒否した会社側に対する抗議手段としては適法性の範囲を逸脱したものと言わざるを得ない。しかしながら諭旨雇とはいえ、従業員としての地位を奪うものであり、申請人両名の前記一応の認定の行為に、当日までの闘争の経緯等諸事情を総合的に考慮すると、これをもつて申請人両名を論旨解雇とすることはその懲戒権の程度を越えた処分と言うべきである。