全 情 報

ID番号 03674
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 城東製鋼事件
争点
事案概要  定期健康診断により被用者が結核にかかっていること、その病状が相当進んでいることを知った使用者がそれを当人に知らせず、そのため発見が遅れ、化学療法による治療が不可能となり、外科手術を受けることを已むなくされたとして、使用者に対して損害賠償を請求した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
労働基準法51条1項(旧)
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1971年3月25日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ワ) 6001 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 時報645号96頁/タイムズ264号359頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 労働基準法五一条一項は「使用者は、伝染性の疾患、精神病又は労働のために病勢が悪化するおそれのある疾病にかかった者については、就業を禁止しなければならない。」と規定し、同条二項が「前項の規定によって就業を禁止すべき疾病の種類及び程度は、命令で定める。」と規定しているのを受けて、労働安全衛生規則四七条四号は「胸膜炎、結核、心臓病、脚気、関節炎、けんしょう炎、急性泌尿生殖器病その他の疾病にかかっているものであって労働のために病勢が著しく増悪するおそれのある者」を就業を禁止すべき者として定めている。
 前記認定によると、被告は原告が肺結核に感染し、治療又は精密検査を要することを知っていたことは認められるが、それ以上病状の程度、性質を知っていたものとは認められず、原告に医師の診療および精密検査を受けるよう指示しているのであるから、その結果の報告をまって現在の労働のために病勢が著しく増悪するおそれがあるかどうか判断して対応措置をとれば足りるものというべきであり、健康診断の結果から直ちに就業を禁止し、あるいは制限することは就業の機会を奪うことにもなり、このようなことまで右法令が要求しているとは解されず、また右法令は使用者の労働者に対する義務を直接定めているとも解されない。
 原告の従業していた出荷受渡部門が軽作業であること、および原告の残業時間数が多くないこともまた前記認定のとおりであるから、いずれにしても被告が原告を休業とし、あるいは軽作業に転換させなかったこと等について、被告に故意、過失があるとはいえない。