全 情 報

ID番号 03694
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 国鉄動力車労組東京地本事件
争点
事案概要  折り返し運転すべき電車をホーム側線に放置したまま乗務を放棄した争議行為を理由として懲戒免職処分とされた国鉄電車運転士がその効力を争った事例。
参照法条 公共企業体等労働関係法17条
日本国有鉄道法31条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1971年8月31日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ヨ) 2369 
裁判結果 認容
出典 労働民例集22巻4号813頁/時報641号35頁/タイムズ270号122頁
審級関係
評釈論文 佐藤昭夫・ジュリスト491号82頁/寺田博・早稲田法学48巻1号97頁/雪入益見・労働法律旬報788号32頁/竹下英男ほか・季刊労働法82号79頁/藤田若雄・ジュリスト513号109頁/野村晃・ジュリスト491号88頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 債権者らは、債権者らの行なつた乗務放棄は、いわゆる集団的労働関係における争議行為としてであり、しかもその目的・手段において正当な争議行為の範囲内にとどまるものであるから、これに対していわゆる個別的労働関係における服務規律違反として就業規則又は日本国有鉄道法に規定する懲戒処分の制裁ないし問責をおこなつてはならない旨主張する。しかし債務者の事業ないし業務の強い公共性にかんがみて、公労法一七条一項の規定は、その行為がたんなる債務不履行(同盟能業)等の行為であつても、業務の正常な運営を阻害するものであるかぎり、これを違法とするものであつて、憲法二八条の保障する団体行動の一つである争議をする権利を制限するものである。したがつて、いわゆる事業法たる日本国有鉄道法の定める懲戒の規定(三一条一項)は、債務者の職員が争議行為として同法三一条一項の各号の一に該当する行為をした場合にその適用を排除すべき理由を見出しがたく、争議行為にも適用があるものと解するほかない。
 (中略)
 右に認定した(一)から(四)までの事実にてらして考えるに、債権者両名に対する本件懲戒免職処分は、その妥当性・合理性を欠き、債務者の総裁に認められた日本国有鉄道法三一条一項の定める懲戒権の合理的な範囲を著しく逸脱したものと認めるのが相当である。したがつて本件免職処分は懲戒権の濫用として無効であるというべきである。