全 情 報

ID番号 03707
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 ニュー・ヴィクトリア事件
争点
事案概要  飲食店とバンドマンとの間の専属出演契約につき、右契約は雇傭に類似するものとして民法六二八条、労基法二〇条一項本文を類推適用して、右契約の解約が認められた事例。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法20条1項本文
民法628条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
裁判年月日 1971年11月11日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ワ) 5236 
裁判結果
出典 タイムズ274号276頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕
 二、そこで本件契約が解約によつて終了したとする被告の抗弁について判断する。
 被告が昭和四四年六月五日原告に対し本件契約の解約申入をしたことは当事者間に争がなく、証人Aの供述によると、被告は昭和四四年五月一九日営業不振のため「B会社」を閉鎖したのであるが、同年七月一日から新店舗で同種の営業を再開する予定であつたところ、予定していた新店舗の敷金、賃料等が高過ぎるため、右開店計画を中止せざるを得なくなつたので、おそくとも同年六月一日までには原告にその旨を告げ、原告の新しい出資先としてC会社を紹介した上、同月五日右解約申入をするに至つたことが認められる。
 ところで、〈証拠〉によると、本件契約書には、第五条として、「原告ならびに被告は、本件契約期間終了の三ケ月前に契約の更新、解約を申入れることができる。又原告は契約期間中の中途解約については、原則としてできないが、被告の許諾ある場合は原告、被告が協議することができる。ただし、この場合中途解約により被告に損害が生じたる場合は、原告は損害相当額の賠償請求に応じなければならない。」との規定があるけれども、右以外に、被告からする解約については何らの明示の約定もなかつたことが明らかである。被告および原告は、右のような本件契約中の解約に関する定めを前提として、被告の解約権の存否およびその要件について種々の主張をしているが、当裁判所は、本件契約は期間の定めのあるものではあるが、以下のような要件のもとに解約できると解すべきものと考える。すなわち、前記当事者間に争のない請求原因第2項の事実と前掲甲第一号証によれば、本件契約は、いわゆる典型契約中の雇傭契約そのものとはいえないが、もつとも雇傭に類似するものと認められるから、使用者側からの解約権については、主として民法の雇傭に関する規定、労働基準法の労働契約に関する規定等を類推するのが相当である。