全 情 報

ID番号 03736
事件名 退職金請求事件
いわゆる事件名 斉藤組事件
争点
事案概要  退職金給付規定中に「就業規則の規定により懲戒解雇した場合には、退職金は支給しない。手続上依頼退職の形式により退職させた者も含む」との定めのある会社において、就業規則所定の懲戒解雇事由があると認められながら「事業縮小のため」との理由で解雇された者がした退職金請求について、その当否が争われた事例。
参照法条 労働基準法3章
労働基準法11条
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 懲戒等の際の支給制限
裁判年月日 1986年3月27日
裁判所名 札幌地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (ワ) 364 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働民例集37巻2・3合併号179頁/労経速報1279号3頁/労働判例490号98頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-懲戒等の際の支給制限〕
 以上によれば、原告は、昭和五八年一一月二五日付で、形式的には「事業縮小のため」という会社都合を理由として解雇されたものの、その実質は懲戒解雇であり、原告も右の事実を承知していたと言うべきである。
 成立に争いのない甲第一号証によれば、被告の退職金給付規定には、第五条に「就業規則の規定により懲戒解雇した場合には、退職金は支給しない。手続上依願退職の形式により退職させた者も含む。」との定めがあることが認められるところ、右後段の規定の趣旨は、実質は懲戒解雇であるが、会社が該従業員の将来を考えて、懲戒解雇とはせず、別の形式をとって退職させ、該従業員もそのことを了解している場合は、退職金は支給しないというにあると解されるから、その形式としては必ずしも依願退職の形式がとられた場合に限られず、これと同視しうる場合も含まれるものと言うべきである。本件の場合、右に認定した事実によれば、被告の担当者訴外Aが原告に対し、懲戒事由の存在を説明し、原告においても特にこれを否定せず、形式上「事業縮小による解雇」とすることを了承していたのであるから、依願退職の形式によって退職させられたのと同視しうる場合として、右後段に該当するものと解するのが相当である。
 原告は、被告が原告の行為を不問に付し、原告に対する懲戒解雇権を放棄したと主張する。しかしながら、被告が右に認定した原告の不正行為の事実関係を知りながら、原告に対しこれを不問に付し、懲戒解雇権を放棄したとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、原告の右主張は理由がない。
 以上のとおりであるから、原告の退職金は、退職金給付規定第五条後段により、発生しない。