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ID番号 03755
事件名 停職処分無効確認等請求各控訴事件
いわゆる事件名 国鉄職員事件
争点
事案概要  東京代々木公園で行なわれた集会およびその後のデモに参加して公務執行妨害罪の嫌疑で現行犯逮捕された国鉄新潟駅構内係および東新潟港駅構内指導係の職にあった者に対する欠勤を理由とする停職処分の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1986年6月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ネ) 2451 
昭和57年 (ネ) 2582 
裁判結果 棄却
出典 労働判例478号14頁
審級関係 一審/新潟地/昭57. 9.20/昭和52年(ワ)498号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 以上のとおり、第一審原告X1の本件欠勤については就業規則所定の届出があり、これについて承認を拒絶できない場合に該当し、他方、同X2の本件欠勤は右届出を欠くものである。もっとも、第一審原告X2についても、同X1について判示したところと同様に、何らかの公務執行妨害の所為を敢行したことを確認するに足る証拠はないものといわざるを得ず、そのほかに同第一審原告がその責に帰すべき原因により逮捕、勾留を招来したものと認めるべき証拠はないのであるから、同第一審原告の欠勤が前記就業規則にいうみだりになされたものとは認定し得ず、したがって右欠勤自体を直ちに懲戒の対象となし得ないものといわなければならないが、そうであっても、就業規則一二条所定の届出制度が有する前記のような意義に鑑みるときは、届出義務の存在はいささかでも影響を受けるものではないのであって、これを欠くときは、就業規則違反の責を免れ得ないものである。
 (中略)
 前記認定事実によれば、第一審原告X2の本件無断欠勤は、同第一審原告の職場における上司同僚の努力と犠性により現実に業務に支障を生じさせることは回避できたのであるから、右二号の規定には該当しないが、他の各号に該当するものというべきである。第一審原告X2は、本件懲戒処分通知書の前記記載に照らして、第一審被告は、一七号以外の規定に該当することを主張することが許されない旨主張するが、右の記載が一号、一五号に該当することの指摘をことさら排除するものとは到底認められないのみならず、特定の行為が懲戒事由を定める就業規則のどの条項に該当するかについては、処分者は、懲戒処分当時に告知した条項のみならずその他の条項をも処分無効確認請求の訴訟において主張することが許されると解すべきであるから、採用することができない。
 (中略)
 謹慎はその形式、内容、目的において未だ懲戒処分と同一視するに足るものとは認められないので、これによって第一審原告星野が手当の関係で不利益を受け、精神的な負担があったとしても、本件懲戒処分が二重処分として許されないことになるものとはいえない。」
 (中略)
 ところで、同一事由に基づき二度にわたり懲戒処分を課すことが許されないことは多言を要しないが、第一審原告X2に対して命ぜられた謹慎は、前記のような目的のもとに日勤勤務をさせた業務命令であって、本件無断欠勤に対する制裁としてとられた措置ではなく、懲戒処分が発令されるまでの暫定的措置としてのものというべきであり、これが長引いたのにも前記のようにある程度やむを得ない事情があり、その内容も、日勤勤務として具体的な作業を命じないというものであって懲戒処分とは異なるものである。