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ID番号 03779
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 大東文化学園事件
争点
事案概要  理事長によって示された学園の方針に対する反抗的発言、学長その他の理事に対する誹謗中傷を理由とする普通解雇につき、権利濫用にあたり無効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 仕事の不賦与と賃金
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ユニオンショップ協定による解雇と賃金請求権
裁判年月日 1986年10月13日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ヨ) 2273 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例484号63頁
審級関係 控訴審/03991/東京高/昭63. 7.20/昭和61年(ネ)3023号
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-仕事の不賦与と賃金〕
〔賃金-賃金請求権の発生-ユニオンショップ協定による解雇と賃金請求権〕
 債権者の解雇理由は、以上認定のとおり、昭和五六年一二月から昭和五七年三月までの約四か月間の債権者の言動であり、概括的に言えば、事務連絡会議において理事長によって示された学園の方針に対する反抗的発言に始まり、そのような発言の取消を命じた学長の命令に従わなかったばかりか、学長その他の理事に対しても誹謗中傷の態度を拡大し、さらに懇話会名義で学園教職員に対してまで広く中傷誹謗文書(備忘録及び公開質問状)を送付して理事会執行部に対し攻撃的態度を示し、執行部の事情聴取において、このような態度の修正要求を拒否したものであるから、このような言動は就業規則二八条一項三号後段(正当な理由なくして上司の命令に違反して本学園の秩序を著しく乱したとき)、一〇号(その他前各号に準ずる不都合な行為があったとき)の懲戒解職事由に該当するというべきである。
 (中略)
 3 右のような事情にかんがみると、債権者の解雇事由とされた言動は、組織の一員として極めて非常識なものではあるが、理事者側の対応にも火に油を注いだきらいがあり、客観情勢にも異常な点があったこと、失職は債権者に非常な苦痛を生ずることからすれば、これに対して解雇をもって臨むのは相当ではなく、本件解雇は、社会通念に照らすと合理性を欠き、解雇権を濫用したもので、無効というべきである。