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ID番号 03940
事件名 雇用契約関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 国鉄長野原自動車営業所(兼職)事件
争点
事案概要  旧国鉄職員が、国鉄総裁の兼職承任を受けないままに市町村議会議員に立候補して当選した場合において、国鉄の職員たるの地位を失うか否かが争われた事例。
参照法条 公職選挙法103条1項
日本国有鉄道法20条1号
日本国有鉄道法26条2項
労働基準法7条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 公民権行使 / 公民権行使と休職・解雇
退職 / 失職
裁判年月日 1988年3月8日
裁判所名 前橋地高崎支
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ワ) 193 
裁判結果 棄却
出典 労働判例521号38頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔退職-失職〕
 前記公選法一〇三条一項の趣旨からすると、当選の告知を受けた時点において総裁の承認を得ているか否かによって、国鉄職員を辞職したものとみなすかどうかが決せられるのであるから、公選法一〇三条一項及び日鉄法二六条二項の各規定上、国鉄職員は、市町村議会議員の当選の告知を受ける前に総裁の承認を得ていない限り、当選の告知を受けることによって自動的に失職するものと解するのが相当である。そして、このことは国鉄職員が公職の候補者に立候補した場合にはすみやかに立候補届を所属長に提出すべきこととする被告の取扱い(兼職基準規定三条)からしても、その者が当選の告知を受ける前に、総裁があらかじめ、その者に対し承認を与えない旨通知しておくことも、停止条件付で承認を与えておくことも可能であるし、また、その方が右立候補をした国鉄職員の立場からみても承認を得られるかどうかをあらかじめ知ることができ、それによって当選の告知を受けた場合に備えることができる利点があることによっても明らかである。
〔労基法の基本原則-公民権行使-公民権行使と休職・解雇〕
 (五) いうまでもなく国鉄における労使関係においても労基法が尊重されなければならず、従って、総裁が、日鉄法二六条二項但書により国鉄職員と市町村議会議員との兼職を承認するかどうかについて判断するに際しても、労基法七条の公民権保障の趣旨を尊重すべきことは原告指摘のとおりであり、国鉄部内の取扱いに関する通達である兼職基準規程もかかる趣旨で立案されていることが窺える。しかしながら、日鉄法二六条二項但書に該当する場合においては公選法一〇三条一項は適用されない或いは公選法一〇三条一項による失職の効果は、総裁の適法な不承認を停止条件として発生し、兼職基準規程が就業規則の実質を有し、被告と原告との労働契約の内容となっているとの原告の主張は、いずれも独自の見解をいうものであって採用しえないものである。