全 情 報

ID番号 03990
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 神姫バス事件
争点
事案概要  合理化の一環として組合との合意のうえ、「事務補職」を廃止し、右業務に従事していた女子従業員を専用ガイドに配転転換したことにつきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1988年7月18日
裁判所名 神戸地姫路支
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ワ) 332 
裁判結果 棄却
出典 時報1300号142頁/労働判例523号46頁/労経速報1333号5頁
審級関係
評釈論文 下井隆史・判例評論366〔判例時報1312〕226~232頁1989年8月1日/荒木尚志・労働判例百選<第6版>〔別冊ジュリスト134〕192~193頁1995年5月/小宮文人・日本労働法学会誌74号100~107頁1989年10月/中川克己・経営法曹95号12~19頁1991年1月/道幸哲也・法学セミナー34巻6号111頁1989年6月
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 現在我が国における終身雇用の労働慣行下においては従業員は同一の職場に長く勤務することにより、賃金、退職金その他の労働条件が改善されることを期待して自己の生活設計を立てているので、経営者としても安易に労働条件の低下をともなう配転を命じることは許されず、特に本件のような人員整理のため希望退職者を募集し、更に整理解雇を避けるために解雇回避措置の一環として労働条件の低下をともなう配転を命じた事案については労働者自身に非があった訳ではないから、その配転命令を必要とする業務上の必要性と従業員に与える不利益を比較衡量して必要最小限度の労働条件の低下に止めるべきであり、希望退職者の募集を成功させんとする余り、苛酷な労働条件を用意することも多いと考えられるので、特に慎重な判断が要求される。したがって、使用者が配転内容を決定するに当たって労働者の被る不利益を考慮し、それを可能な限り縮小すべく努力したか等の事情が考慮されるべきであり、使用者が労働協約に基づいて配転命令を発したとしてもなお権利の濫用と判断すべき場合も考えられないでもないが、基本的には使用者と労働組合との交渉結果によって決すべきものであるから、著しく不当とすべき特段の事情があると認められないかぎり権利の濫用には当たらないというべきである。