全 情 報

ID番号 04030
事件名 遺族補償給付不支給処分取消請求事件
いわゆる事件名 高山労基署長(中部電子製作所)事件
争点
事案概要  元工場長(取締役)たる地位にあった、現在の取締役の父親が融資を受けるための書類を司法書士事務所に届けての帰路で交通事故により死亡したケースで業務性の存否が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働義務の内容
裁判年月日 1988年10月17日
裁判所名 岐阜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (行ウ) 6 
裁判結果 棄却
出典 労働判例529号66頁/労経速報1376号22頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働義務の内容〕
 (二) 右認定の事実によれば、被災者は、父子の情愛及び製作所への愛着・従業員の生活の憂慮からその所有不動産を担保に供することを承諾し、自らその融資交渉に赴くこととするとともに、右交渉及び登記手続が円滑に進行するよう書類を整えるため、自らA司法書士方を訪れたものであり、被災者の被災当日の行為は出退勤途上のものということもできず、本件事故は、製作所の従業員としての被災者の業務とは関係のない被災者の私的行為によって発生したものと認めるのが相当であり、被災者が製作所の支配下に置かれていると認めるべき特段の事情があることを認めることはできず、本件全証拠によっても、他に右特段の事情があることを認めるに足りる証拠はない。
 (中略)
 しかし、災害が労災法に基づく保険給付の対象となるには、それが業務上の事由によるものであることを要し、そのための要件の一つとして、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において当該災害が発生したことを要するのであることは先に判示したとおりであるところ、緊急行為といえども、事業主の支配下にある状態におけるものとして、労働者の担当業務に付随して労働者に期待しうる行為に限定されるものと解すべきである。
 前記(二)に認定した事実によれば、本件においては、被災者の被災当日の行為は、事業者たる製作所の支配下にあるものとは認められないのであるから、本件事故が緊急行為によるものであるとしても業務行為によるものとみることはできない。