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ID番号 04067
事件名 継続任用拒否処分取消等請求事件
いわゆる事件名 名古屋市立菊井中学校事件
争点
事案概要  補充教員として臨時的に任用された者に対する年度途中における任用更新拒否に対する損害賠償請求が認められた事例。
参照法条 地方公務員法22条2項
労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1988年12月21日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (行ウ) 23 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 時報1330号140頁/タイムズ702号172頁/労働判例531号14頁
審級関係
評釈論文 榊達雄・教育判例百選<第3版>〔別冊ジュリスト118〕176~177頁1992年7月/小山永樹・地方公務員月報312号55~61頁1989年7月/伯井美徳、桑尾雅之・教育委員会月報41巻2号27~30頁1989年5月
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 先に認定したとおり、本務欠員補充教員の職務内容は本務の教員と何ら変わるところがなく、本来は本務の教員がそれを遂行すべきところ、主として将来における過員の防止等人事構成の適正化という政策目的のために本務欠員補充教員をしてこれに当たらせるものであるから、職務の性質からは本務欠員補充教員の職を「臨時の職」(地公法二二条二項)あるいは「臨時的任用を行う日から一年以内に廃止されることが予想される臨時のもの」(任用規則三九条二号)とみるのは相当でなく、また、前記判示の本務欠員補充教員の学校教育における役割に鑑みると、その任用期間を六月以内に制限することにも特段の合理性を見出すことができない。このような点に鑑みると、被告において本務欠員補充教員の採用を地公法二二条二項による臨時的任用の形式において行ったこと自体に無理があったと評さざるを得ず、そのことのために本来例外であるべき臨時的任用の更新を原則的なものとせざるを得なかったということができる。
 右に判示した臨時的任用の問題点に加えて前記争いのない事実及び認定事実に現れた被告ないし市教委における本務欠員補充教員任用の実態、臨時的任用制度の運用態様、本務欠員補充教員の処遇方法、本務欠員補充教員の職務内容及び学校教育における位置付け、原告に対する従前の本務欠員補充教員としての臨時的任用の実態並びに本件臨時的任用の経緯等を総合考慮すると、原告が、本務欠員補充教員の職務内容、本件臨時的任用に際してのA中の教頭の対応及び従前の本務欠員補充教員としての取扱いなどから、本件臨時的任用の期間として昭和六〇年九月三〇日までと辞令上明示されていたにもかかわらず、任用の更新を受けたうえA中において少なくとも昭和六一年三月三一日までは本務欠員補充教員として勤務できるものと期待したことには無理からぬものがあるということができ、原告が右のような期待を抱くに至った主な原因は、被告ないし市教委が本務欠員補充教員の任用について前記問題点を包含する臨時的任用という形式を採用したうえ、右形式と実態との齟語をとりつくろうためにその運用に際しては年度単位で計画、運営される学校教育制度に合せて一年間の任用期間を前提とするかのような取扱いを重ねてきたことにあるということもできる。そうだとすると、被告は、原告の継続任用に対する前記期待を自ら作出したといえるのであり、任用の更新を妨げるべき特段の事情が存するなど相当な理由がないのに任用の更新をしないことは、正当に形成された原告の期待を侵害するものとして違法な行為といわざるを得ない。