全 情 報

ID番号 04107
事件名 解雇差止等仮処分申請事件
いわゆる事件名 丸全昭和運輸事件
争点
事案概要  ユニオン・ショップ協定にもとづく解雇につき、除名処分の前に有効に脱退しているとして、右解雇の効力が停止された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法16条
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇権の濫用
解雇(民事) / ユニオンショップ協定と解雇
裁判年月日 1985年4月12日
裁判所名 横浜地
裁判形式 決定
事件番号 昭和60年 (ヨ) 242 
裁判結果 認容
出典 労経速報1255号13頁
審級関係
評釈論文 伊藤幹郎・労働法律旬報1125号67頁1985年8月10日
判決理由 〔解雇-解雇権の濫用〕
〔解雇-ユニオンショップ協定と解雇〕
 一件記録によれば、全化同盟Y会社労組は組合規約九条において、「本組合を脱退せんとする者は脱退届書に所要事項を記入し執行委員会の承認を得なければならない」と定めていることが一応認められる。ところで、労働組合は労働者の自由な意思に基づく結合をその根幹として成立しているものであるから、労働者が自らの意思により当該労働組合から離脱することもまた自由でなければならない。したがって、組合員が労働組合を脱退するには執行委員会の承認を得なければならない旨の規定は公序に反し無効というほかはなく、組合員の脱退の効力は当該組合員の脱退の意思表示が組合に到達したときに発生すると解すべきである。前記認定の事実によれば、申請人両名は昭和五九年一二月一一日全化同盟Y会社労組を脱退する旨記載した書面を同組合A書記長に手交したのであるから、申請人両名の全化同盟Y会社労組からの脱退の効力は同日発生したものというべきである。なお、申請人両名は、前述のとおり、全化同盟Y会社労組の活動を不満として同組合を脱退し、その活動内容に共鳴することの多かった全港湾横浜支部に加入したのであるから、申請人両名の脱退を権利の濫用として無効とすべきいわれはない。
 右のとおり、申請人両名は本件除名処分の前に既に全化同盟Y会社労組を有効に脱退しているのであるから、全化同盟Y会社労組が申請人両名に対してなした本件除名処分は組合員でない者に対してなされた処分というべく、その効力を生ずるに由ないものである。
 しかして、全化同盟Y会社労組がなした申請人両名に対する本件除名処分が効力を生じない以上、右除名を前提として全化同盟Y会社労組との本件ショップ協定に基づいてなした会社の申請人両名に対する本件解雇予告は、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由が窺われない本件においては、解雇権の濫用として無効というべきである。
 また、申請人両名は全化同盟Y会社労組の活動を不満として同組合を脱退し全港湾横浜支部に加入したことは前述のとおりであるから、このような場合、本件ショップ協定の効力は申請人両名には及ばないものと解すべきである。