全 情 報

ID番号 04174
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 旭硝子事件
争点
事案概要  工員の募集に際し大学卒の学歴を高校卒と詐称したことを理由とする懲戒解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法570条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 経歴詐称
裁判年月日 1970年3月23日
裁判所名 横浜地川崎支
裁判形式 決定
事件番号 昭和44年 (ヨ) 220 
裁判結果 却下
出典 時報607号87頁
審級関係
評釈論文 川口実・法学研究〔慶応大学〕43巻8号73頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-経歴詐称〕
 債務者会社においては、作業部門における従業員の編成、単純作業に対する耐性、転職の防止等の配慮から、作業員として、従来は中卒者のみを採用してきたが、中卒者の減少により昭和三九年六月以降は高卒者をも採用するにいたったものの、なお作業員として採用する者の学歴は右の程度に止め、大卒者を採用することは全く考えておらず、債権者の採用時においても、右の方針に従って、川崎工場の作業員を募集したものであるところ、債権者が前記のような身上調査表を提出したため、同人が高卒限りで進学せずその後は父の家業を手伝っていたものと誤信してこれを採用したが、もし債権者が大卒者であることをその際知りえたならば、これを採用しなかったはずであることが一応認められる。
 (中略)
 債務者が作業員の採用につき前認定のような厳格な学歴の制限をもって臨んでいたことに鑑みると、このような募集の仕方は、応募者に対していささか不親切のそしりを免れないが、工場労務に従事すべき作業員の募集といえば、その作業の性質、待遇等からみて一般に高卒以下の学歴を有する者の募集対象としているものと受け取るのが世間の常識であるから、債務者が債権者のように大学卒の学歴を有する者が応募してくることを予期して予め学歴に制限ある旨明示しなかったからとて、これを信義則に反するものとしてとがめるには当らないであろう。