全 情 報

ID番号 04235
事件名 給与支払請求事件
いわゆる事件名 福岡県幸袋小学校教員事件
争点
事案概要  一斉休暇闘争に参加した教員に対する給与の減額支給につき、右減額が労基法二四条一項の全額払の原則に違反するとして争われた事例。
参照法条 労働基準法24条1項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 過払賃金の調整
裁判年月日 1969年3月19日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和33年 (ワ) 974 
裁判結果
出典 教職員人事判例6号196頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金の支払い原則-過払賃金の調整〕
 毎月の給与支給日が一定されその月の勤務に対応する給与がその月に支給される場合でその支給日が月末でないとき減額事由がその支給日以後に発生した場合はその翌月の給与からの減額であれば特にその金額が労働者の生活に脅威を与えないものである限り例外的に許容されるものと解され、また、このことは、たとえ減額事由が給与支給日以前に発生し、観念的には右減額事由発生後最初に到来するその月の給与支給日に支給されるその月の給与からの減額が可能である場合でも、若しなんらかの客観的事情によりその月の給与からの減額が社会通念上不可能であると認められる場合も同様に考えられ、その場合も当然翌月の給与からの減額が例外的に許されるものと解すべきである。したがつて、以上説示の如き例外にあたらない給与の減額は労働基準法第二四条第一項に違反し違法となる。
 六 これを本件の場合について考えてみるに前認定事実によれば本件減額事由が発生したのは五月七日であつてその月の給与支払日である二一日以前であつたがこれを同月の給与から減額することは社会通念上不可能であつたと認めるべきであり、その減額分も原告らの月給与手取額の四%にも達しない額であつたのであるから当然翌六月の給与からの減額の限度において例外的に許容せらるべき場合であつたといいうるところ前認定のとおり本件減額が右限度を越え八月二一日まで遷延されたのは専ら県教委の裁量によるものであつて、これを社会通念上減額実施が同日まで不可能であつたと認めるべき事由とはとうていなし難いところである。もとより前認定の事実によれば、本件減額の手続がおくれたのは減額に反対する福教組の圧力の下に県教委が慎重かつ民主的にその手続を進めたことによるものであることはこれを認めるに余りあり県教委の並々ならぬ努力は充分評価すべきではあるが労働基準法第二四条第一項の法意および前記最高裁判決の趣旨に従う限り同条の解釈は厳格であるべきであるから、左様な裁量による減額の遷延をもつていまだ社会通念上減額遷延のやむをえざる事由と見ることはできない。したがって本件減額はさきにのべた特に許容される例外の場合にはあたらないから労働基準法第二四条第一項に違反し違法であるというべきである。