全 情 報

ID番号 04247
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本亜鉛鉱業事件
争点
事案概要  会社本店課長の職にある者に対する不適格を理由とする解雇につきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
裁判年月日 1969年5月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和43年 (ヨ) 2286 
裁判結果 却下
出典 タイムズ235号178頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 本件解雇に至る事情として、次の事実を一応認定することができる。
 (一) 申請人は、会社が昭和三五年立案した鉱業所の増産合理化案に対し、選鉱部門の責任者として人員削減に反対したため、前記のように本店勤務を命ぜられたところ、本店勤務中、(イ)自動車運転免許を取るため等の理由で遅刻することが多く、また、勤務時間中に無断外出することも可成りあり、このため、同四〇年一〇月頃上司から九時一五分までに出勤し、遅刻した場合は届け出るよう指示されたが、これに従わないことが多く、(ロ)社長から一度外国雑誌の一部翻訳を命ぜられたが、これに従わず、(ハ)会社では同四〇年春鉱業所において副産物として産出されるガーネットの採掘、販売を中止することにしたところ、同年一一月頃申請人からこれが販売は利益があるとの意見が出たため、社長において関係資料の提出を申請人に求めたところ、中止している以上資料の提出は不要であるとしてこれに応ぜず、(ニ)同三九年秋頃会社のいわゆる親会社であるA株式会社資材部主催の資材担当者会議に会社担当者として出席した際、親会社に不快感を与えるおそれのある発言をし、(ホ)同四一年五月Bホテルにおいて、通産大臣の全国保安表彰につき労務災害防止協会主催の懇親会が、出席者の会費はその人員に応じて関係各社が負担するということで開催されたところ、会社分として席は二名分しか用意されておらず、社長と被表彰者が出席するため、申請人のための席の余裕はないことを知りながら、かつ、社長よりかような事情から出席しなくてよい旨の指示があつたにもかかわらず、あえて懇親会に出席して、社長に他の列席者の手前気まづい思いをさせ、(ヘ)日頃書類の保管等について他との協調を欠くことも少くなかつた。
 (中略)
 申請人の前記一連の言動を綜合すると、申請人に課長としての適格性を欠く憾みがあつたことは否定できず、特に懇親会出席の件は非常識きわまるとのそしりを免れず、申請人の学歴、職歴、年令、また、本店転勤の経緯と本店従業員の構成からすると、会社内に申請人を課長の役職を免じたうえ平従業員としてとどめるべきポストは当時なかつたといえるから、会社が申請人に対し転職先を見つけるに足る準備期間を与えたうえ解雇しようとした措置が著しく当を失したものということはできず、賃金全額支給の一ケ年の待機およびこれに引き続く賃金六割支給の六ケ月の待命期間は、前記準備のための配慮として一応つくされているといえなくはないから、本件解雇とこれに至る待機、待命処分を目して、そのいづれもが権利の乱用にあたると解することは困難である。