全 情 報

ID番号 04249
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 村山製作所事件
争点
事案概要  賃金受領に際して残業手当の支給がなされていないことを事実上会社を総括する者に質問したことで、その者にエリ首をつかまれその場で解雇された労働者がその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 上司反抗
裁判年月日 1969年6月4日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ヨ) 2327 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 タイムズ239号210頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-上司反抗〕
 会社においては、休憩時間も充分でないばかりか、勤務終了時間も一定せず、加えて残業手当が労働基準法どおり支給されなかつた。しかるところ、申請人が昭和四三年一〇月三日、同年九月分賃金を受取つたところ、残業手当を支給されなかつたため、この点をAにたしかめたところ、同人は初めは静かに応待していたが、そのうちに激昂して申請人のえり首をつかみ、「きさまは会社を何だと思つているのか」「文句を言うならやめろ」などと激しい言葉を浴せ、遂にはその場で申請人を解雇する旨言渡したことが認められ、この認定に反する疎明はない。
 このように、労働者の基本的な労働条件に関する話合いのなかで、一時の興奮にかられたAが申請人に何らの非違がないにもかかわらず、思いつき的に解雇の挙に出たものであることからすると、本件解雇のきつかけはあまりにも些細なことであることである。一方、申請人にとつてみれば、これにより予想もしなかつた職を失うという結果となつたのであるが、これらの点を併せ考えると、被申請人の行つた本件解雇の意思表示が真実会社代表者の意にかなつたものかどうかはともかくとして、被申請人の措置は極めて一方的で申請人にとつては酷である上、社会的にも不相当なものである。従つて本件解雇の意思表示は権利の濫用として無効である。