全 情 報

ID番号 04271
事件名 免職処分取消請求事件
いわゆる事件名 大阪府労働部職業管理課長事件
争点
事案概要  条件付採用期間中の国家公務員が適格性を欠くとして免職とされその効力を争った事例。
参照法条 国家公務員法59条1項
国家公務員法81条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 条件付採用
裁判年月日 1969年11月19日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (行ウ) 10 
裁判結果 一部認容,一部棄却
出典 行裁例集20巻11号1424頁
審級関係 上告審/三小/昭49.12.17/昭和47年(行ツ)89号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-条件付採用〕
 国公法第五九条第一項は前述のとおり職員の採用はすべて条件付のものとし、その職員が一定の期間勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、はじめて正式採用になるものとしたのである。すなわち、条件付採用期間中は未だ職員として正式採用されるまでの選択過程であつて、任命権者は条件付採用期間中に競争試験または選考の方法により捕捉することができなかつた要素が存しないかどうか、あるいはそれらの方法により判定されたとおり実際の勤務において職務遂行能力が発揮されるかどうかについて考慮する機会を与えられることにより不適格者を排除し、成績主義の原則の完壁を期そうとするのが、条件付採用制度の意義であつて、条件付採用期間中の職員の労働関係はその期間における勤務を良好な成績で遂行することを正式採用の停止条件とする特殊な労働関係であるというべきである。これは私企業におけるいわゆる試用契約制度と同様の機能を営むものである。
 ところで、原告らは、先ず条件付採用制度について国公法は適格性の判断に関する客観的、合理的な基準を定めず、かえつて人事院規則一一-四第九条が不適格事由を具体的に定めていること、また条件付採用期間の終了時点において適格者である旨の判定の表示や取扱上の差異がないことからして、ここにいう条件とは停止条件ではなく、条件付採用期間中は不適格事由による解雇権が留保されていることを意味するものであると主張する。しかしながら、国公法第五九条第一項が適格者を正式採用する側面から前述のように職員が一定の期間その職務を良好な成績で遂行することを条件として正式採用となる旨規定したのに対し、人事院規則一一-四第九条が不適格者を排除する側面から「条件附採用期間中の職員は、法(国公法)第七八条第四号に掲げる事由に該当する場合又は勤務実績の不良なこと、心身に故障があることその他の事実に基いてその官職に引き続き任用しておくことが適当でないと認める場合には、何時でも降任させ、又は免職することができる。」と規定し、やや具体的に不適格事由を定めているが、これらはいずれも条件付採用期間が正式採用前の選択過程であることを両面からそれぞれとらえただけのことであつて、人事院規則の前記規定が存することをもつて、前述した条件付採用制度の意義を変更すべきものとは解されない。
 (中略)
 被告が、同原告が条件付採用期間中の職員であることを考えたうえ、前記(1)ないし(3)の事実に基づいて同原告が公共職業安定所の職員として必要な適格性を欠いていると判断して同原告を本件免職処分に付したことは首肯できるところであつて、免職処分事由に関する裁量を誤つたとか、処分権を濫用したとかの違法があるとはとうてい言うことができない。