全 情 報

ID番号 04274
事件名 懲戒免職処分執行停止申立事件
いわゆる事件名 茨木市事件
争点
事案概要  地方公営企業の行なう業務は、本質的に私企業の行なう経済活動と同様であり、労基法三三条三項にいう「公務」には該当しないとされた事例。
 市水道における断水状態の発生につき、業務の運営上通常発生することのない事故ということはできないとして、労基法三三条一項にいう「災害その他避けることのできない事由」に該当しないとされた事例。
参照法条 労働基準法33条1項
労働基準法33条3項
体系項目 年休(民事) / 時季変更権
年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的)
裁判年月日 1968年1月18日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 昭和42年 (行ク) 9 
裁判結果 認容
出典 行裁例集19巻1・2合併号18頁
審級関係 控訴審/大阪高/昭43. 6.15/昭和43年(行ス)1号
評釈論文
判決理由 〔年休-時季変更権〕
〔年休-年休の自由利用(利用目的)〕
 本件においては、水道事業所管理者の発した業務命令の適法性が問題となつており、この点は組合のいわゆる自主給水の評価更には申立人の行為の情状に影響すると考えられるので、以下この点について検討する。
 労働基準法第三三条第三項によれば、公務のため臨時の必要がある場合においては一般の公務員に対し勤務時間を超えて労働させることができるとされている。水道事業所の職員が法制上公務員であることは疑がないけれども、地方公営企業の営む事業内容は本質的に私企業の行なう経済活動と同様であつて公権力の行使を含んでおらず、法律も企業としての経済性を発揮させるためその組織および財務に特別の措置を講じて地方公共団体より或程度の独立性を附与し、その職員の労働関係についても団体交渉、労働協約の締結を認めるなど一般労働者に類する取扱をしていることにかんがみると、地方公営企業の行なう業務は右労働基準法第三三条第三項にいう公務に該当するものとは解せられない。また本件の場合、水道事業所とその職員との間に労働基準法第三六条による協定、いわゆる三六協定が締結されておらなかつたことは前認定のとおりである。そうすると水道事業所職員に対し時間外勤務を命じ得るのは同法第三三条第一項の場合、すなわち「災害その他避けることのできない事由によつて臨時の必要がある場合」に限られることになる。
 そこで、右にいう「災害その他避けることのできない事由」の意義について考えてみるに、その文言および労働基準法が労働者の時間外労働を厳格に規制している趣旨にかんがみると、火災、水害等の災害およびこれに準ずる事故、すなわち業務の運営上通常は発生することがないためあらかじめこれを避けることができなかつた事故を指し、かかる事故によつて臨時の必要を生じた場合にのみ時間外労働をさせることができる趣旨であると解するを相当とする(なお三六協定はこれを締結すると否とは労働者の任意なのであるから、右法文の解釈に当つて直接関係がないと解する)。本件についてこれをみるに、断水ということはたしかに業務上および公益上さし迫つた就労の必要性のある場合ということができるが、茨木市の場合過去幾回となく喝水期に断水状態が発生していたこと前認定のとおりであるから、業務の運営上通常発生することのない事故と謂うことができない。