全 情 報

ID番号 04283
事件名 地位保全、賃金支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 銀星タクシー事件
争点
事案概要  非組合員のタクシーの無線交信妨害を指示したとしてなされた組合長に対する懲戒解雇につき、右指示の疎明はないとして無効とされた事例。
 夏期手当および冬期手当の賞与金が賃金の一部にあたるとされた事例。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 賃金の範囲
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害
裁判年月日 1968年2月29日
裁判所名 宮崎地都城支
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ヨ) 33 
裁判結果 一部認容,一部却下
出典 時報513号79頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕
 右の事実によれば、非組合員のタクシーの無線交信を妨害したらという発言に対して、組合長である申請人Xはむしろ消極的な態度を示しているのであって、右の質疑応答がされたことによって、第二回定期大会において非組合員の無線を妨害することが組合の方針として決定されたということは、とうていできない。結局組合の第二回定期大会において、右のような運動方針が決定されたことはなかったものといわざるをえない。また、その後現実に無線妨害が行われるまでの間に、申請人らが組合の執行部として、右のような方針を定め、これを組合員に指令したり、あるいは個人として、右のような行為を他の従業員に使そうしたことを認めるに足りる疎明は、全然存在しない。
 以上によれば、結局、前記2に認定した組合員によるとみられる無線妨害が、申請人らの指示にもとづいて行われたものである、という被申請人の主張を裏付ける適確な疎明はない、といわなければならない。
 (中略)
 以上の諸点を綜合して判断するときは、申請人らに対する本件解雇は、結局、被申請人が申請人らの正当な組合活動を嫌悪したことの故をもって行われたものであるといわなければならない。したがって、本件解雇は、労働組合法第七条第一号の不当労働行為に該当し、労使間の公序に反する無効なものである。
〔賃金-賃金の範囲〕
 ところで、被申請人は、申請人ら賃金の平均月額を算出する基礎に、夏期手当および冬期手当を算入することは、正当でないと主張する。夏期手当および冬期手当などのいわゆる賞与金は、その名称のいかんを問わず、通常、賃金の後払いの性質を有するものというべきであるから、特段の事情の認められない本件においても、賃金の一部と考えるべき性質のものである。
 しかしながら、弁論の全趣旨によると、昭和四一年度においては、夏期手当は八月中に、冬期手当は一二月中に、支給されていたことが認められ、この事実によれば、その支払期日は毎年八月末または一二月末であると推認されるのであるから、これを各月に分割して、各手当の支払期の到来前である毎月五日にその支払を請求する権利が、申請人らにあるものということはできない。ゆえに本件解雇がなければ申請人らが毎月五日に支払をうけるであろう賃金月額は、右の夏期手当および冬期手当を控除した残額の平均月額とほぼ同額のものと推認するのが相当である。